リュックに入っていた古いテープレコーダー
投稿者:ねこじろう (147)
その時彼は前方に一瞬だが岸辺で水遊びや花火をする楽し気な子供たちの姿や、砂利地でバーベキューをしたりビールを飲み騒ぐ大人たちの姿がぼんやり見えたような気がした。
それからしばらく歩いたSは川沿いに転がる適当な岩を見つけ、そこに腰掛ける。
そしてポケットから煙草をだすと、ぼんやり川の流れを眺めながら吹かしていた。
※※※※※※※※※※
それからどれくらい時間が過ぎたころか、ふと左手に目線をやった数メートル先の地面にリュックがポツンとあるのに彼は気付く。
立ち上がるとその近くまで行き、改めてそれを見た。
昭和の頃に一世を風靡した特撮ヒーローが描かれた青い下地の子供用のリュックだ。
もう随分昔からここにあったかのようにボロボロで色褪せている。
─他のモノならともかくリュックを忘れて帰るなんて、なんてお人好しな子だろう
などと思いクスリと笑い彼はそれに近づき中座すると、ファスナーを開けてみた。
中にはリュックと揃いの青い水筒やヒーローの刺繍されたタオル、数個の袋菓子が入っている。
目を引いたのは奥まったところにある、金属製で銀色の箱のようなもの。
興味を引かれて取り出してみると、それは小型のカセットテープレコーダーだった。
今はほとんど使われていない録音再生だけの出来るもののようだ。
小窓を見るとテープが収納されているのが分かる。
─カセットテープか、、懐かしいなあ。
これには昭和時代の子供が録音したものが入っているのかな?
いったい何が録音されているんだろう。
好奇心にかられたSは試しに再生ボタンを押してみた。
当然だがやはり動かない。
本体をひっくり返し背面部の下方にある蓋を外してみると、単三の電池が4つ収納されていた。
恐らく電池切れなのだろう。
その時ふと彼は、車内のダッシュボードに新品の単三電池を入れてあるのを思い出した。
それで立ち上がると歩いて車のところまで行き5個パックの新品の単三電池を取り出すと、それを片手にリュックのある場所まで戻る。
なかなか面白かったです。
こういう作品好きですね
ワクワクするタイトル
怖いというよりも悲しい
皆様、コメントありがとうございます。
とても創作の参考になります。
─ねこじろう