午前二時を過ぎた頃、私は駅前からタクシーに乗った。
その日は仕事関係の飲み会が長引き、終電を逃してしまった。雨こそ降っていなかったが、夜風は冷たく、駅前のロータリーにも人影はほとんどなかった。
やがて、一台の古びたタクシーが音もなく私の前に止まった。
後部座席に乗り込み、自宅の住所を告げる。
「お願いします」
運転手は返事をせず、ルームミラー越しに小さくうなずいた。
年齢は分からなかった。深くかぶった帽子のせいで、目元が影に隠れていたからだ。痩せた頬と、不自然なほど白い耳だけが、暗闇の中に浮かんでいた。
タクシーが静かに走り出す。
酒のせいもあって、私はすぐに眠気に襲われた。窓の外を流れていく街灯を眺めているうちに、意識がゆっくりと遠のいていった。
どのくらい眠っていたのだろう。
目を覚ますと、車は見知らぬ道を走っていた。
窓の外には店も民家もない。信号も電柱もなく、ただ異様なほど幅の広い道路が、闇の中をどこまでも真っすぐに伸びていた。
街灯だけが等間隔に並んでいる。
しかし、どの街灯も青白く明滅し、その下には人の形をした黒い影が立っていた。
私は身を起こし、運転席に声をかけた。
「すみません。道、間違えていませんか?」
返事はなかった。
「運転手さん?」
もう一度呼びかけながら、前方をのぞき込む。
運転席には、誰もいなかった。
ハンドルだけがひとりでに左右へ動き、アクセルもブレーキも踏まれていないのに、タクシーは一定の速度で走り続けている。
背筋が凍った。
助手席も空だった。運転手の帽子だけが、座席の上に置かれている。
私は慌ててドアを開けようとした。しかし、ロックを何度外しても、すぐにカチリと元へ戻ってしまう。
そのとき、前方の街灯の下に立っていた黒い影が、ゆっくりとこちらへ顔を向けた。
次の街灯の下にいる影も。
さらに、その次の影も。
すべてが一斉に私を見ていた。
タクシーが影の横を通り過ぎるたび、窓の外から声が聞こえた。
「乗せて」
























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