【慎太郎くんのいたという家】
投稿者:ねこじろう (147)
「その事件は平成の始め頃に起こったらしい。
舞台は、俺たちの今住んでいる、ここF市北部山あいにある古い住宅街の外れにあった二階建ての一軒家。
昭和の終わり頃のこと、そこにはとある夫婦と一人息子が暮らしていたそうだ。
お父さんは大学教授をしていたそうで、息子は名を慎太郎くんと言った。
彼は物心つく頃には精神に異常をきたし、その行動にはおかしなところが現れてきて、両親は学校には行かせず自宅で監護・教育していたようだ。
当時を知る近所の住人は、日常における慎太郎くんの奇行には恐怖さえ感じていたらしい。
というのは、まだ13、4歳くらいの時、既に彼の身長は180センチもあったみたいで、いつもピチピチのボーダー柄をしたTシャツに半ズボンという格好で奇声をあげながら歩き、道行く人に石を投げたり突然追っかけまわして暴力をふるったり、近所の猫や犬を捕まえては残酷に殺したりしていたからだ。
だから両親は極力、彼を外に出さないようにしていた。
家にいることが多くなった慎太郎くんは徐々に両親に暴力を振るうことが増えだし、最後はとうとう16歳の時、自宅で両親を殺してしまった。
その理由がなんと母親が勝手に彼の部屋に入り、大事にしていたフィギュアの一つを捨ててしまったからだったらしい。
警察に逮捕された時彼は未成年ということで、その後は国の矯正施設に入所させられた」
そこまで話して運転席に座る藤木は、助手席に座る彼女の愛実をチラリと横目で見た後、後部座席に座る友人の倉崎と堀江をルームミラーで見る。
同じ大学の同級生である四人はオカルト愛好家であり、とある初冬の日曜日、藤木の車で曰く付きの廃屋に向かっていた。
藤木は車とアニメ好きのちょっと小太りの男。
ひげ面で大柄の堀江が口を開く。
中高とラグビーでならした体育会系の猛者だ。
「じゃあ今日は、その慎太郎くんの住んでいた家に行ってから探索するつもりか?」
「ビンゴ!」
藤木が親指を立ててから応えた。
「でもさあ、その慎太郎くんという子、平成の始め頃に両親殺して矯正施設に入れられたのが16の時なら、今はもう40過ぎのオッサンということだろ。
そんな年齢になってもまだ施設にいるのかな?」
四人の中で一番ビビりの倉崎が質問する。
色白でひょろりとした華奢な体型だ。
すると助手席に座る藤木の彼女愛実が振り向き彼の顔を見ると、
「いや、さすがに今は普通に社会生活送ってんじゃないの?」と言った。
ショートの茶髪で小柄のおとなしい感じなのだが、意外と男勝りの性格をしている。
それに対して倉崎がビビりつつ言う。
「それは危険過ぎるよ~」
するとハンドルを操作しながら藤木が口を開いた。
「いや、それが真偽は定かじゃないが、慎太郎くんは施設内で自殺していて既にこの世におらず、その心霊が嘗て住んでいた家を未だに徘徊しているんじゃないか?とか、
逮捕されて数年後には施設を脱走し、たまに家に戻ってきているのでは?とか、
近所の住人の間でいろんな勝手な噂があがっているんだ」
怖いです ゚ ゚ ( Д )
コメントありがとうございます。
─ねこじろう
読み応えありました。
コメントありがとうございます。─ねこじろう
慎太郎くんに感情移入して読んでしまったのでなんだかもの悲しくせつない気持ちになりました。
後はご想像にお任せします。か。
怖い話のオチ考えるのは大変ではあるけど。
少なくとも何かは考えて欲しい