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ヒトコワ

件の首さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

間違いファックス
短編 2022/10/27 23:22 1,942view
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 昨年の秋、私は残業をしていた。

 広いオフィスに私独り。
 寂しいと思うかも知れないが、誰かに邪魔をされる事のない、一番仕事がはかどる時間帯だった。
 業務の目処が付き、ホッとしたところでコピー機が動き始めた。
 ランプの点滅から、それがFAXの受信である事が分かった。コピー機は複合機で、FAXも兼ねていたのだった。
 通常、こんな時間のFAXは明日にまわして見る事はない。
 だが、その時は妙に胸騒ぎがした。

 排紙トレイに出たA4の受信文書には、文字はなかった。ただ、黒い点がぽつぽつとあるだけだった。
 ヘッダを見ると、送付元は得意先だった。

「裏表を間違えたか?」
 紙をよく見たが、裏写りした文字の痕跡もなかった。
 明日連絡を入れるか、今一度迷っていると。
 また、FAX受信のランプが点滅した。
 排紙トレイに出た受信文書を取り、ざっと見ようと思った時。
「うわっ!?」
 私は思わず声を上げ、用紙を取り落としていた。
 用紙には、人間の手が映っており、その横には「たすけ」の文字があった。
 その時私は理解した。

 先ほどの黒い点は、血だと。

 直ちに警察に連絡を入れた。
 警官は、得意先のオフィスで、血の海の中でコピー機にもたれるようにして息絶えた社長を見つけた。腹を刺され、死因は出血多量だった。
 コピー機のガラス面には、血が残っていた。
 警察の見立てでは、犯人が逃亡した後、虫の息の社長が助けを求めるために、最初に目についた相手に送信したのだろう、との事だった。
 証拠品としてFAX文書は警察に提出した。

 その後も警察が捜査を続けているが、今の時点で犯人は逮捕されていない。
 犯人は社長がうちにFAXを送った事に気付いているのだろうか。
 それに気付いて、何かしら犯人に繋がる証拠を伝えていると勘違いされたら。
 いつかFAXから、犯人の脅迫メッセージが届くような気がして、不安でならない。

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関連タグ: #声#海#警察
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