消えた『たかしくん』
投稿者:煙巻 (8)
小学生の頃、俺の友達に「たかし」という腕白な子供がいた。
たかし君は同年代の子供の中では活発で男子女子の垣根を超えて人気者の地位を築き、誰とでも親し気に話すけど何処かのグループに属する事をしない、そんな男の子だった。
例えば、体育の授業でドッジボールをした時でも、敵チームが女子を狙って全力投球したボールを自ら当たりに行って自然と庇ったかと思えば、一方で男子とは接近戦になった際にボールの予測を外して股間に当たって悶絶する様な面白い立ち位置にも居た。
ある日、クラスの男子の何人かと夏祭りに行った先で、俺達は関係者以外立入禁止の立札を見つけた。
地元にある神社で行われる毎年恒例の夏祭りなんだけど、神社の境内は実際には数えていないが500段以上も長い石段を登った頂上にあって、その途中に小休憩できる踊り場が設けられている。
その踊り場の脇道を進むと、深い雑木林の中で錆びて色褪せた立入禁止の立札が雪洞なんかの照明に照らされて、まるで俺達を待ち構えているようだった。
「この先、何かあんのかな?」
誰だったか、仲間内の男の子がそう言ったのを皮切りに全員が立札の先に興味津々と言った面持ちだったが、分別はつく年頃だったので、流石に無断侵入は気が引けたのか首を長くして暗く沈んでいく道筋を覗き込む程度で済ませた。
だけど、たかし君は違った。
「じゃあ、俺がちょっと見てくるよ」
俺達は流石にこんな真っ暗な雑木林は危険だと説得したが、たかし君は全員の制止を振り切り「大丈夫、大丈夫」と立札を潜り抜けてしまう。
正直、まだ子供だった俺は一人で夜道を歩くことさえ億劫だったが、たかし君は手元に明かりが無いと言うのに平然と暗がりに進んでいった事から皆も「すげえ」と歓声を上げてたかし君の後ろ姿を見届けた。
たかし君の姿が完全に闇に溶け込んだ頃、ふとたかし君と待ち合わせ時間を決めていなかった事に気付いた俺達は、いつ戻るか分からないたかし君を石段の踊り場の脇道でひたすら待つ事を余儀なくされた。
しかし、たかし君は待てど暮らせど戻る気配を一切見せない。
「たかし君、遅いね」
「まさか迷子になってないよね」
誰かの不穏な一言が場の空気を凍らせた。
それから約一時間後、遂に痺れを切らせた一人が立ち上がったかと思えば、全員で立札の中を確認しに行こうと切り出す。
正直な所、夏祭りそっちのけでここまで時間を浪費していると早く帰りたい気持ちが募ったが、たかし君の安否も気になると言うのが大半で、全員が軽く確認する程度なら大丈夫だろうと許容していた。
言い出しっぺが立札を潜ろうと身を屈めた矢先、闇の中から「コラッ」と声が聞こえたので全員が背筋を正して飛び跳ねた。
声の主はたかし君だった。
たかし君は笑いながら「ごめん、ごめん、お待たせ」と何食わぬ顔で戻って来た。
ただ、たかし君の声は弾んでいる様に聞こえるが、どうにも目は笑ってない様に感じて少し悪寒を覚えた。
「長すぎ」
「なんかあった?」
各々が文句を言った後、本命が立札の先に何があったのか問いかければ、たかし君は笑みを止めてただ一言「何も」と突っぱねたまま押し黙る。
俺達は釈然としない面持ちで「結局何もないのかよ」なんて好き勝手言っていたが、たかし君は静かな表情を維持して俺達の後ろを歩いていた。
そんな事があったのが小5の夏だった。
それ以降もみんなと遊んだ記憶はあるが、大学生となった今は遠い昔の事過ぎて何をして遊んでいたかなんて鮮明に思い出す事が出来なくなってきた。
俺は進学を機に他県に飛び出した為、今では一人暮らしによる家事の大変さと生活費の為のバイトに明け暮れて忙しい日々を送っていたが、進学して約2年越しに久々に地元に帰省する事ができた。
苗字知らんのか?
↑そういう話じゃないと思うのだが・・・
前に怪談のイベントか何かで、「自分しか覚えてない小学校時代の同級生がいる体験談」が意外と多いと話題になってた
イマジナリーフレンドとはちょっと違う感じもあって面白い
どういうこと?
面白かったです
この話がわからない人がいるのがわからない
なんだよc子と結婚したかと思ったのに…