「札幌駅前の雑居ビルのカラオケに行くと呪われてしまうのでしょうか?生憎北海道は遠いので難しいですが、機会があれば是非私も呪われてみたいものです!それでは今回の動画はここまで、チャンネル登録と高評価を…」
合成音声ソフトに読ませる台本を書き上げ、私は椅子にもたれかかった。
怪談朗読チャンネルを運営していながら、私は心霊現象にはとんと縁が無かった。だからこそ、動画の中で「幽霊に会いたい」だとか、「呪いを体験したい」だとか言えるんだと思う。
私は休憩がてら以前の動画についたコメントをチェックしていた。すると、5ヶ月ほど前にアップした動画に新しいコメントがついていた。
「本牧海浜公園に呪われるスポットあります!行ってみてください!」
(たまにこういうコメントあるけどさぁ、動画のネタにしてほしいなら詳細書いて怪談にして来いよ…心霊スポット凸チャンネルじゃねぇっつの)
などと考えながら、私はとりあえずグッドボタンを押しておいた。
翌日、そのコメントには更に返信が続いていた。
「それ知ってます!本牧海浜公園に夜行って、街灯に照らされていない水際で待っていると呪いが降りかかるんですよね!」
「そうです!地元だと結構有名ですよね!」
どうやら意外と盛り上がっているようだ。横浜市在住の私にとっては、本牧は車ですぐ行ける距離だ。行ってみるのも動画にオリジナリティが出て良いかも知れない。
「あそこは怖い。かかる呪いもそんなに強くないからおすすめ」
「深夜3時に北側の柵の辺りに行くんですよね!」
どんどん返信がついていく。軽くネットで検索しても、そのような情報は出てこない。これは、まだ未開拓な心霊スポットなのだろうか。
だが、そのうち妙な違和感に気づいた。
誰も呪いの内容に触れないのだ。
「主さんいつ行きます?良ければ同行しますよ!」
「動画配信楽しみにしてます!」
いくら何でもこれほどコメントが続くのは異常だ。ふと思い立ち、コメントしている人のアイコンをクリックしてアカウントを確認してみた。
私は愕然とした。全員他の動画には一切コメントしていないのだ。
私は恐ろしくなり、その動画を削除した。
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