私は結局消灯も施錠もほっぽり出して外に逃げ、翌朝の出勤時間が来るまでずっと近くのコンビニの駐車場で震えていたのですが、不思議と怒られることはなく、それどころか気の毒そうな、哀れむような目線をちらちら向けられる始末でした。
その状況に耐えられず先輩を捕まえて昨日のことを話し問い詰めると、先輩は「大丈夫、別に何かしてくるわけじゃないから」と笑って自分を宥めました。
その先輩によると、あれはこの会社に勤める人間ならほとんど誰もが知っている幽霊なのだというのです。
「20年くらい前らしいんだけど、もう末期って言ってもいいようなアル中の爺さんが勤めてたらしくてさ。手もガタガタ震えててとても仕事にならないような状態だったんだけど、創業当時からの古株社員だったから誰も文句言えなかったんだって。
……で、結局作業中に高いところから落っこちて即死。当時は結構問題になったらしいよ」
その作業員が、どういうわけかあの倉庫に出るのだというのです。
倉庫に出る理由は分からないらしいのですが、ああやって塗料なりアルコールなりの入った缶を供えておくと、とりあえず倉庫の外には出てこないと。
それを聞いた私はしかし、それはおかしな話じゃないかと思いました。
アル中が原因で命を落とした人を供養するなら、ビールなり清酒なりそういうものを供えるべきなのではないかと。
確かに工業用のアルコールも酒ではありますが、それを酒と言って丸め込まれる人間はいないでしょうし、塗料などはもはや論外でしょう。どう考えても、酒とは言えません。
そう先輩に聞くと、彼は鼻で笑って、
「大丈夫大丈夫。もう自分が何飲んでるのかすら分かってないんだから。満足そうに飲んでただろ?ペンキ」
と言いました。その言葉に何故だかすごくゾッとしたのを覚えています。
私は結局一年足らずで辞めたのですが、その会社は今年の夏に経営不振で倒産してしまったそうです。
建物は取り壊され、今は更地になっているという話ですが、供養が途絶えた今もあの霊はあそこに留まっているのでしょうか。
分かりませんが、私はその近辺にはなるべく近寄らないよう心がけています。
おおおこわい
毎回ペンキを零されていたら床が大変なことになるのでは…
お供えがペンキて。
面白かった
アル中患って死んだらこうなっちまうのか…
酒控えよ
とりあえず工業用でもいいからアルコールを供える、までは良いとしてペンキ!?
中毒の行き着く先は恐ろしい。
こういう場所の上に家がたって怪奇現象引き継ぐんだよなーと
おもしろい。映像が見える。すごい文章。
いや、そのあとどうなったんだよ
アル中の幽霊は普通にペンキを飲むことに驚いたwwwwww
文章上手い。読みやすかった。
「供えとけばとりあえず出てこない」ってことは それがわかるまでは事務所まで出てたんかな(ノдヽ)コワイ…
建物もなくなって供物もなくなったらその辺ぶらぶら歩いてるかもしれんし 近隣で勝手になんらか啜ってそう((( ;゚Д゚)))アババ