ページ一面に、黒と赤のペンで『それ』が描かれていた。
「ひっ……!」
Cが短い悲鳴を上げて口を押さえる。
そこに描かれていたのは、皮膚が真っ黒に焼け爛れ、肉が溶けて目や口の形すら崩れ落ちた人間の顔だった。ぐちゃぐちゃに引かれた不気味な斜線と、ただ黒く塗りつぶされた目孔(まなこ)のような穴が、紙面からこちらを凝視している。
絵のすぐ下に、ポツンと一言だけ添えられていた。
『こんな顔だよ』
言葉を失った。冷や汗が吹き出し、体の震えが止まらない。
記子さんは単なる「都市伝説の優しい女の子」などではない。この世のものではない狂気じみた何かが、ノートの向こう側から私達を見つめているのだ。
恐怖が一気に現実味を帯び、私たちの興奮は完全に吹き飛んだ。
気味が悪くなった私たちは、誰も記子さんへの返事を思いつくことができず、書こうとはしなくなった。やがて、ノートを怖々図書室の棚に押し戻すと、逃げるようにその場を後にしたのだ。
【ルール①:記子さんからのメッセージには必ず返事を返すこと】
……私たちがその重大なルールを破っていることに気づいた時には、もう遅かった。
異変は、突然始まった。
最初の犠牲者は、顔について尋ねたAだった。
昼休み、校舎の階段を下りていたAが、突然何かに背中を押されたように前へつんのめり、そのまま踊り場まで転げ落ちたのだ。足を複雑骨折する大怪我だった。病院へ運ばれていく間際、Aは「誰かに足を掴まれた」と怯えた目で呟いていた。
次に、Bがいなくなった。
あの日以来、すっかり怯えていたBは、ある日突然学校に来なくなった。家にも帰っておらず、警察の捜査が入るほどの本格的な失踪だった。Bの部屋の机には、丸文字で『私を無視して…!』と書かれた紙くずが残されていたという。
「次は……次は私かもしれない……!」
パニックに陥った3人目のCは、元凶であるあのノートを処分しようと放課後の図書室へ向かった。
【ルール④:ノートを絶対に無くさない。捨てるのもダメ】
それがさらなる禁忌だとも知らずに。
私が胸騒ぎを覚えて図書室へ駆けつけた時には、惨劇が起きた後だった。
地震も起きていないのに、開架の巨大な木製本棚が激しい音を立てて倒れ、Cはその下敷きになっていた。大量の血を流し、意識不明の重体。
たった数日のうちに、仲良しだった4人組のうち3人が大怪我、失踪、意識不明の重体に追い込まれたのだ。
「……どうして……どうしてこんなことに……!」
しんと静まり返った図書室。倒れた本棚の脇に、あの紺色の大学ノートが落ちていた。
恐る恐るノートを開くと、新しいページに、記子さんの普段の字とは思えない殴り書きでこう書かれていた。
『こいつらも結局、アノコ達と一緒…私を無視して、ノケモノにして…殺してやる殺してやる殺してやる』
私の中で、恐怖はすでに狂気じみた激怒へと変わっていた。
仲間を無残に奪われた絶望の中、私は鞄から黒いマジックペンを取り出した。























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