夜の街で一番人気を誇るホステスをご指名するのが、最近の俺の密かな贅沢だった。
ある店で、他のホステスとは別格に美しく、それでいてどこか上品でおしとやかな雰囲気の子がいた。
俺も一度、彼女を指名したいと思っていたが、いつ行っても他の親父たちに指名されていて、なかなか指名できなかった。
ある日、奇跡的に、気になる彼女を指名することができた。
彼女はとても清楚で、華やかで気配りも完璧だった。彼女との時間は格別だった。
さらにその後、再び彼女を指名することができた。彼女に見合うような高い酒や料理を注文し、楽しい時間を過ごす。
しかし、運ばれてくる料理やドリンクに妙な違和感を覚えていた。
オードブルの中に紛れた一本の長い黒髪。スープを口に運んだときにガリッと不快な音を立てた、固い爪の破片。仄かに血生臭い匂いのするワイン。俺の胸に薄暗い疑惑が首をもたげ始めた。
またある夜、彼女を指名したが、彼女が「あなたのために、特別なお料理を持ってきますね」と微笑んで席を立った。
俺はトイレに行く振りをして、廊下の奥にあるSTAFF ONLYの扉の隙間から、こっそりバックヤードを覗き込んだ。
そこには、薄暗い厨房で無機質な笑みを浮かべる彼女の姿があった。彼女は自身の指先を刃物で躊躇なく切り刻み、ポタリと滴る鮮血を皿の上に振りかけていた。足元には、自ら切り揃えた爪や髪の毛が散らばっている。狂気に満ちた手つきで血を料理になじませる様子に、俺は恐怖で息を呑んだ。
(あの子、ヤバいかも)
恐怖で席にも戻れず、逃げるように会計カウンターへ向かった。だが、そこに立っていたのは彼女だった。
極上の笑みを浮かべる彼女は、さっき仕込んでいた皿を持ち、右手には、痛々しく血が滲む包帯が巻かれている。
皿の脇には、滴る血で
「あなたの虜になりました」
と歪んだ文字で書かれたメモと、指名料の欄に血でチェックが入った伝票が置かれていた。

























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。