俺がまだクソガキで、ムカデ売りをしていた頃の話だ。
その頃の俺は自然豊かといえば聞こえのいい、ド田舎の山村に住んでいた。
上京して知ったが、都会の人はド田舎に対していいイメージを持っていない。事実かどうかに関係なく、村社会だの、陰湿そうだの好き放題に言っている。
俺の故郷の村を思い出すと、何も反論できなかった。
その村から少し外れた、道すらまともに整備されていないようなところに、ひとりの男が住んでいた。
その男は呪術師の家系で、昔は重宝されていたらしいが、いつの頃からか気味が悪いとか言われて村八分にされていたらしい。
酷い話だよな。
その男に出会ったのは、俺がムカデだの毛虫だのを駆除と称して殺しているときだった。
「殺すくらいなら俺に売ってくれ。すぐそこの家にいるから、生きているやつを毎日でも持ってきてくれ」って言ってきた。
痩せこけて髭面で、どう見ても不審者だった。
俺が何に使うのかを尋ねたら、その男は「餌にするんだよ。だから、丸呑みできる大きさがいい」と答え、俺が殺したムカデのうちの1匹をつまんで持ち上げた。
俺は簡単に小遣いが手に入ると思って、ふたつ返事で了承した。男は「俺は村八分にされているから誰にも言うな。お前まで怒られるぞ」と言って笑い、そのまま帰っていった。
翌日、ムカデを10匹くらい持っていった。
そしたら、その中から適度な大きさの3匹を選んで1000円を払ってくれた。
あと、『家に結界を張ったから、俺はもうここから出られない』なんてことも言ってたけど、言葉の意味なんて考えなかった。
相場から見て、高いのか安いのかなんて分からなかった。今でも分からないけどな。
でも、その頃の俺にとってその金額は大金だったから、毎日、ムカデを捕まえて持っていった。他にも欲しいと言われたから、トカゲとかカエルとか、あとはよく分からない虫なんかも持っていった。
1週間くらいして、何の餌にしてるのか聞いたんだよ。ただの興味本位で。
そしたら、「俺だよ」って口だけが笑ってた。
俺が何も言えずにいると、俺が渡したムカデを口に入れて水で流し込んでた。
あまりに気持ち悪くて、怖くて、その男の家を出ようとした時に声をかけられた。
「俺はもう長くない。だから、最期まで頼む」って。
もちろん意味なんて分からないから、俺は走って帰った。でも、その翌日も俺は何匹かの毒のありそうな虫を持っていった。
「昨日は気持ち悪いものを見せて悪かった。信じてもらえないと思ったからな」なんて言って、口だけが笑ってた。
そして、その日はお金と手作りのお守りを渡してきた。「肌身離さず持ってろ」って。
それから3日くらい後だったと思う。
男が死んでた。
ほんとなら、親とか村の誰かに知らせなきゃいけなかったと思う。でも、俺はそうしなかった。
村八分にされてる男に会ってたなんて知れたら怒られると思ったからだ。
男の死体を見てから1週間くらい経った頃から、原因不明の病が村で流行り始めた。村がなんとも言えない不安に包まれていたと思う。
























お読みいただきありがとうございます。
ご感想などありましたら、下記アカウントまでお寄せください。
Twitter:@tochika__
https://x.com/tochika__