雨上がりの夕暮れ、湿ったアスファルトの匂いが漂う帰り道だった。水たまりをよけながら歩いていると、横断歩道の真ん中にポツンと小さなそれが落ちているのが目に入った。
それは今、SNSで大バズりしている人気のめじるしアクセサリーだった。手に入れたくてもどこも売り切れで、ずっと欲しかったものだった。
「どうせ落とし物だから」という浅ましい独占欲が胸をもたげ、私はそれを拾い上げ、自分のポケットにしまい込んだ。
その瞬間から、背後でチャプ、チャプと水音を立てて歩く小さな足音が聞こえ始めた。
気のせいだと思い、歩調を早める。しかし、足音もぴったりと同じテンポで近づいてくる。振り返ろうとした時、耳元に直接息がかかるような距離で、掠れた幼い声が囁いた。
「それ、僕の。返して。」
血の気が引く思いで振り返ったが、そこには誰もいない。
気のせいだと思い、家路を急ぐ。
「このめじるし、何に付けようかな?」
「みんなに見せたらどんな反応するかな?」
そんな虚栄心から、ふと、改めてアクセサリーを見返そうと、ポケットに手を入れると、
今度はポケットの中でアクセサリーがぶるぶると小刻みに震え出した。プラスチックの硬質な感触ではなく、まるで生き物のように湿った、冷たい感触が指先に伝わってくる。
パニックになりながらポケットから引き抜こうとしたが、指がアクセサリーに張り付いたように離れない。足音が、もうすぐ後ろまで迫っている。
「返してよ。僕のだよ。」
「逃げてもだめ。めじるしでわかるよ。」
はっきりと声が聞こえ、声の方に視線をやると、
足元から見上げるように、ずぶ濡れの子供が立っていた。顔の皮膚は青白く、その目はどんよりと濁っている。子供が差し出した小さな冷たい手が、私の手首を掴んだ。
極限の恐怖に震えながら、私は子供の手を強く振り払い、その子の手にめじるしアクセサリーを投げ込むようにして返した。
「……わかったよ!そんなに欲しけりゃやるよ!」
私は、そのまま逃げるようにその場を走り去った。
数日後、私はもう一度あの交差点へ足を運んでみた。当時は気が付かなかったが、
そこにはペットボトルに入った水と、白い花がひっそりと供えられていた。通りかかった近所のおばあさんが、遠い目をしてぽつりと呟いた。
「……あそこ、ね。少し前に男の子が何か探し物をしてたみたいで、道路にしゃがみ込んでいたんだよ。そこに車が飛び込んできて……。あっという間に、死んじゃったんだよ」























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。