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妖怪・風習・伝奇

Tochikaさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

足りない村
短編 2026/10/03 10:10 33view

大学進学が決まって、祖父母に顔を見せに来た。なんとなく懐かしくなって、村を散歩することにした。
俺の祖父母の住む村はかなりの田舎で、その住民は割と手や腕を失っている。
指の揃っている成人はいないんじゃないか?ってくらい。

子供の頃、何人かに理由を聞いたことがあるけど、みんな『夢で怪我をした』とか『起きたらこうなってた』なんてことを言っていた。
よそ者には言えない風習があるのかもしれない。

それはさておき、あまりに田舎なので、金というものが使われていない。
生活は物々交換で行われている。
俺には理解し難いが、時代から取り残された感があって嫌いではない――もちろん、ずっと住むのはごめんだが。

この村ではあちこちに物々交換用の屋根付きの棚があって、隣にはお地蔵様が立っている。
『タダで持っていくなよ! お地蔵様が見ているぞ!』って意味が込められているのかもしれない。

子供の頃は気にしてなかったけど、表情がちょっと独特で、悪意のあるニヤつきに見える。まあ、これは俺の主観だろうな。女の子に見せたら意外と『かわいい』なんて言うかもしれない。

こういった棚は俺が子供の頃からあったけど、今見てもそれほど朽ちているようには見えない。生活の基盤だから、大切に扱われているんだろうな。

棚の品揃えを見ると、果物や野菜は当然として、トイレットペーパーや電球まで置いてある。誰がどこで手に入れてここに置いてるんだ?

子供の頃は交換するものなんて持っていなかったから利用したことはなかったけど、今ならそれなりに物を持っている。せっかくだから利用してみよう。
この村で手に入らないようなものを置いておけば、次に来た人が驚くかもしれない。

と思ったが、荷物は祖父母の家に置いてきてしまった。今あるものといえば、胸ポケットに差しているフリクションのペンとこの村では使い道のない財布。

俺はペン1本を棚に置き、大きめのリンゴをひとつ貰った。食べながら祖父母の家に帰ることにした。

※※※

翌朝、痛みで目が覚めると左手の小指がなかった。
俺の悲鳴で祖父母がやってきて、村の診療所に連れて行ってもらった。診察の結果、俺の指は壊死してどこかに脱落したらしい。昨日までは何ともなかったことを伝えると、医者も首を傾げていた。

そして帰宅後、祖母が布団を片付けている時に悲鳴を上げた。俺と祖父が駆けつけると、床に真っ黒な何かが落ちていた――間違いなく、俺の小指だったものだ。

不意に「足りない」という声を思い出した。
いつ、誰に言われたのかは思い出せないけど。

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コメント(1)
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    2026/10/03/10:24

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