「今日こそは早く寝れると思ってたのに・・・」
そう、力無く自然と愚痴が溢れる。
連日の終電帰りが続いていて体と眠気が限界だったのだろう。20時前に新宿発の電車に乗り、しばらくしたら運良く座れたためにそのままうっかり熟睡。
降りるはずの立川駅をはるかに通り過ぎ、目が覚めると同時に軽いパニックを起こして、思わず開いている電車のホームから飛び出てしまった。
「ここは・・・鳥沢駅?」
見慣れない駅名をスマホで調べる。中央線の奥の方、大月駅まであと2駅という場所。
乗り換えアプリでまだ帰りの上り電車があることを確認してホッとする。
安心したところで冒頭の愚痴が出たのである。
しかしいくら愚痴っても帰宅時間が早まるわけではない。
ホームを見回すが、降車した乗客はすでに改札の方に向かったのだろう、ポツネンと僕だけがホームに取り残されていた。
アプリによると次の電車は40分後。
ただ待つだけの居心地の悪さを感じ、自販機で温かいコーヒーを買う。
ガシャンと乾いた落下音。この音はどうにも昔から好きになれない。
コーヒーを自販機から取り出し、ホームのベンチに座って飲んでいると心も落ちついてきた。
さて暇だしアレでもやるか、とスマホで早速マッチングアプリを開く。
別に今の彼女に不満があるわけでもない。でもなんとなくこの人と結婚するんだという気にもなれない。
29という若さの割には稼げている方だという自負もある。もっと可愛くて、もっと性格の合う彼女ができてもおかしくないんじゃないかと思うあまり、こうやって新しい出会いを求めてしまうのだ。
なかなか可愛い子とマッチングしないな、などと思っていると急にカシャカシャと音漏れのような音が聞こえてきた。
顔を上げて音のした方を見ると、10mほど離れたところに男が立っていた。
いつのまにそこにいたんだと考えるよりも先にその男の姿に恐怖した。
先ほどコーヒーを買った自販機より頭二つは高い。2m、いやそれ以上ある、確実に。
逆に横幅は枯れ枝のような細さで、ふらふらと横に揺れている。
さらに目を引くのが背負っているリュックだ。まるで山男が背負うような巨大なリュック。しかもデカいだけでなく多種多様な骨のモチーフのアクセをジャラジャラと大量にぶら下げている。
彼の首から下げているヘッドホンからシャカシャカ音は漏れているようだ。
その異様な姿に初めは驚いたものの、ジロジロ見るのも失礼だし、療養中の海外のバスケ選手か何かだろうと自分を納得させてまたマチアプに戻る。
しばらくすると先ほどのカシャカシャ音がさっきよりも近くで聞こえた。
こっちに近づいてきている、と思いまた横を見るがなぜかその男はむしろ遠くに、20m以上は離れた距離に立っていた。
こんなに距離が離れているのにこんなにも大きく聞こえるってどんな爆音で鳴らしてるんだ、非常識な外国人もいるものだ、と憤りを感じる。
しかしその男の異様さゆえに文句を言うこともできず顔を落としてまたマチアプに戻る。






















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