その後、サトルくんはユリカちゃんの家に何度か遊びに行った。いつもリビングには大人が数人いて、お母さんが独自の教義を説いていた。
「1999年7月、世界は滅びない。それどころか平和が訪れる。全ての怪我や病気は治る……」
そんな言葉がよく聞こえていた。
※
1年後、サトルくんは6年生になった。
ユリカちゃんとは相変わらず仲良しだった。
ある日の休み時間、クラスで『ノストラダムスの大予言』が話題になった。今までも何度か話になってはいたが、この日は少し違った。
前日にテレビで取り上げられて、クラスのほぼ全員が見ていたのだ。その余韻が残った状態だったからか、人類が滅んだらどうしよう!なんて本気で心配している子もいた。
クラス全体が興奮していると、突然アコちゃんという女の子が、
「別にいいじゃん、皆で死ねたら怖くないよー」
と大声を出した。
「死ぬのなんて怖くない!」
そう叫ぶアコちゃんを見ると、涙を流していた。
アコちゃんは4年生の冬に交通事故に遭い、左の手首から先を失った。一緒にいたお父さんは即死だった。
元は明るく元気が良くてクラスの中心だったが、事故からは大人しくなっていた。
「お父さんは死んじゃったし、私の手はこんなだし、もう私はどうなっても良いの。全て諦めているから……」
事故からずっと苦しんでいたのだろう。皆は泣いているアコちゃんの気持ちを思い、一斉に話を止めた。
「「…………」」
気まずい沈黙を破ったのは、ユリカちゃんだった。
「大丈夫よ、1999年になっても世界は滅ばないわ。それどころか、この世は天国になるのよ。すべての病気や怪我が治るの。だから、アコちゃんの手も元通りになるわ」
はっ?という感じで皆がユリカちゃんを見た。そりゃそうだろう。
「アコちゃんの左手、ちゃんと治るから!」
ユリカちゃんは、澄み切った無邪気な笑顔でそう言った。
「何言ってるの!」
サトルくんは慌てた。周りもざわつき、
「変なこと、言っちゃいけないよ」
「言って良いことと悪いことがあるでしょう」
クラスメートが責める中、アコちゃんだけが目を輝かせた。
「ユリカちゃん、それ本当!?」
「本当よ、アコちゃん」



























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