出張で太平洋側のある港町に行った時の話。
私は建築関係の仕事をしていて、地方への出張も多かった。
あれは数年前の6月。
社長に押し付けられるがまま、件の港町へ赴いた。仕事内容は詳しく話せないが、建物の建て替え等の打ち合わせだ。
朝から始まった打ち合わせが終わったのは夕方17時を少し過ぎた頃だった。
この季節のこの時間はまだ明るい。
「君みたいな若い子はこんな港町に来ないでしょ?海辺に定食屋さんもあるし、散歩がてら行ってきたらどうだ?」
そう提案され、内心めんどくさかったが俺は定食屋まで歩くことにした。
この辺りは木造の住宅が密集しており、家屋と家屋の間の細道を歩き、海へ向かう。
少しずつ、道が開けてきて海が見えた。
堤防まではすぐだった。
夕日が反射する海を眺めていると話し声が聞こえてきた。
「姉さんよ。明日はねぇ?」
「そうだそうだ。残念だねぇ」
「でも、そればかりは仕方ないからねえ」
ふと、右を向くと木製の椅子に腰掛けた3人の老婆が目に入った。
3人は続ける。
「まだ若いのにねぇ」
「ほんとこればかりはねぇ」
「2人も連れていくことねぇのにねぇ」
連れていく?なんのことだ?
さっき姉さんとか言ってたし親戚騒動か?
俺は話が気になり、海を見ているフリをして耳を澄ます。
「姉さんよ、もうそろそろだねぇ」
「そだな」
「全く知らねぇガキだけど心は痛むねぇ」
「残念だ。残念だ」
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