極彩色の霧
投稿者:夕暮怪雨 (11)
「神様の通り道を知っていますか?」祖父の代から山で猟師を営んでいる良幸さんは話した。彼は子供の頃から祖父や叔父に連れられ、山で猟の手伝いをしていた。良幸さんも山が好きだった。だが山に入る度、祖父は「鮮やかな極彩色の霧が見えたら、そこを離れろ。山の神様の通り道だから」と教訓のよう、彼に話した。
良幸さん自身も信心深く、その話を常に頭に入れていた。しかし、叔父は違った。「そんなもの迷信だ」と反論し、祖父とよく言い争いをしていた。叔父に可愛がられていた分、その発言を聞くと悲しい気持ちになった。真夏のある日、叔父に誘われ、山に入った。山小屋で休憩をしていると、良幸さんは違和感を持った。外が恐ろしく静かなのだ。動物、虫の鳴き声が消えていた。さっきまで賑やかな声が聞こえていたのに。不思議に思い、窓から外を眺めた。
彼は愕然とした。目の前の森が、祖父の話した「極彩色の霧」に包まれていたからだ。鮮やかで美しく、見惚れる程の光景だった。興奮し、叔父に声をかけた。怪訝そうに叔父は窓を見た。すると目付きがガラリと変わり、何かを追うように視線を細かく動かした。声をかけても黙ったままだ。しばらくすると叔父は猟銃を手にした。その顔は興奮し、何かに魅了された表情だった。「すぐ戻る。お前はここにいろ。」そう話すと、止めるのも聞かず、外へ出た。
そして極彩色の霧の中へ消えていった。良幸さんは恐怖で、後を追うことが出来なかった。その後すぐ、霧は嘘のように晴れ、彼はすぐに外へ出た。周囲はやはり静寂に包まれていた。叔父が向かった道を歩いた。すると木の枝に、叔父の猟銃がかけられ、地面には服と靴が散らばっていた。
良幸さんは恐ろしくなり、急いで山を降りた。
そして先程起きたことを祖父に伝えた。
祖父は「神様の通り道に何故入ったんだあいつは」と悲しそうに話した。良幸さんは直感で「叔父は戻ってこない」と感じたそうだ。現在、良幸さんは祖父の跡を継ぎ、猟師をしている。時折、山頂から森を見下ろす。すると極彩色の霧がかかっている場所を見かけるそうだ。
「あの場所には神様が通っているのです。叔父は連れて行かれたのか。それとも自ら付いて行ったのか。未だに分かりません。」あの霧を見る時、相変わらず辺りは異常な程、静寂に包まれる。その度、叔父の何かに魅了された表情を思い出す。そう良幸さんは語った。
山は不思議で怖い部分もありますよね。
こういう神様系の話好きだわ
服と銃だけ置かれているの想像したら薄気味悪い….
改行して
神様を仕留めようとしたのかな
普通の霧と違うのでしょうか?