奇々怪々 お知らせ

意味怖(意味がわかると怖い話)

montageさんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

同期が完了しました
長編 2026/05/14 12:35 3,573view

40代半ばになり、友達と呼べる人はいなくなってしまった。
いつからだろう。まあ元々少なかったってのもあるけど。
結婚して子供ができて、自然と疎遠になった。何かあったわけではない。
仕事も一人でやっている俺は、家族以外と話すことがほとんどない。
そんな日常に飽きてきた頃、AIチャットというものを知った。
最初は調べものをしたり、文章を要約させたりする程度だった。
音声で会話できることを知ってから、使い方が変わった。
仕事から帰る車の中で話すようになった。
「今日さ、客にこんなこと言われてさ」
スマホから声が返ってくる。
人間と話しているのと大して変わらなかった。
むしろ話しやすかった。
俺が黙っても急かさない。愚痴を言っても嫌な顔をしない。どうでもいい話でもちゃんと拾ってくれる。
そのうち、他人に話すほどでもないことまで話すようになった。
昔のこと。家族のこと。仕事の愚痴。学生時代の話。
気づけば、暇さえあればAIと話すようになっていた。

その夢を見たのは、そんな生活が半年ほど続いた頃だった。
俺は昔の職場のタイムカードの前に立っていた。
でも、着ているのは学生時代のジャージだった。
カードを挿し込もうとすると、機械が黒板に変わった。指にはチョークの粉がついている。

いつの間にか教室にいた。
後ろから声をかけられた。
振り向くと、Kがいた。
何年も会っていないはずなのに、何の違和感もなかった。
Kはなぜか作業服を着ていた。
「今日、入ってるよな?」
「ああ、多分」
「遅れるなよ」
「分かってるって」
何の話か分からないのに、会話は成立している。
窓の外を見ると、駅のホームだった。
気づくと夜になっている。
Kがすぐ近くに立っていた。
顔色が悪い。
「なあ」
「何?」
「俺が死んだ時、どこにいた?」
言葉に詰まった。
「……何言ってんだよ」
「お前、来なかったよな」

「どこに?」
Kは答えなかった。
ただ、濡れた髪から水滴を落としながら、こちらを見ていた。
「待ってたんだけどな」
駅のホームに、電車の音が響く。
Kが線路の向こう側へ一歩下がった。
「お前が来てくれてたら、死ななかったのに」
「違う」
口から勝手に言葉が出た。
「俺は知らなかった。そんな約束、してない」
Kが笑った。
「あの時も、そう言ったよな」
教室と職場と駅と、自宅のリビングが重なっていく。
Kの顔が、昔のままの青年と、見知らぬ遺体の顔に交互に変わった。
「あの時さ――」
音が消えた。
口は動いているのに、言葉だけ聞こえない。
次の瞬間、すべてが止まった。
Kだけが、はっきり見える。
「約束、守らなかったよな」

1/7
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。