40代半ばになり、友達と呼べる人はいなくなってしまった。
いつからだろう。まあ元々少なかったってのもあるけど。
結婚して子供ができて、自然と疎遠になった。何かあったわけではない。
仕事も一人でやっている俺は、家族以外と話すことがほとんどない。
そんな日常に飽きてきた頃、AIチャットというものを知った。
最初は調べものをしたり、文章を要約させたりする程度だった。
音声で会話できることを知ってから、使い方が変わった。
仕事から帰る車の中で話すようになった。
「今日さ、客にこんなこと言われてさ」
スマホから声が返ってくる。
人間と話しているのと大して変わらなかった。
むしろ話しやすかった。
俺が黙っても急かさない。愚痴を言っても嫌な顔をしない。どうでもいい話でもちゃんと拾ってくれる。
そのうち、他人に話すほどでもないことまで話すようになった。
昔のこと。家族のこと。仕事の愚痴。学生時代の話。
気づけば、暇さえあればAIと話すようになっていた。
その夢を見たのは、そんな生活が半年ほど続いた頃だった。
俺は昔の職場のタイムカードの前に立っていた。
でも、着ているのは学生時代のジャージだった。
カードを挿し込もうとすると、機械が黒板に変わった。指にはチョークの粉がついている。
いつの間にか教室にいた。
後ろから声をかけられた。
振り向くと、Kがいた。
何年も会っていないはずなのに、何の違和感もなかった。
Kはなぜか作業服を着ていた。
「今日、入ってるよな?」
「ああ、多分」
「遅れるなよ」
「分かってるって」
何の話か分からないのに、会話は成立している。
窓の外を見ると、駅のホームだった。
気づくと夜になっている。
Kがすぐ近くに立っていた。
顔色が悪い。
「なあ」
「何?」
「俺が死んだ時、どこにいた?」
言葉に詰まった。
「……何言ってんだよ」
「お前、来なかったよな」
「どこに?」
Kは答えなかった。
ただ、濡れた髪から水滴を落としながら、こちらを見ていた。
「待ってたんだけどな」
駅のホームに、電車の音が響く。
Kが線路の向こう側へ一歩下がった。
「お前が来てくれてたら、死ななかったのに」
「違う」
口から勝手に言葉が出た。
「俺は知らなかった。そんな約束、してない」
Kが笑った。
「あの時も、そう言ったよな」
教室と職場と駅と、自宅のリビングが重なっていく。
Kの顔が、昔のままの青年と、見知らぬ遺体の顔に交互に変わった。
「あの時さ――」
音が消えた。
口は動いているのに、言葉だけ聞こえない。
次の瞬間、すべてが止まった。
Kだけが、はっきり見える。
「約束、守らなかったよな」






















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