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意味怖(意味がわかると怖い話)

志那羽岩子さんによる意味怖(意味がわかると怖い話)にまつわる怖い話の投稿です

隣の部屋の音
短編 2026/04/22 19:40 43view

深夜2時。アパートの薄い壁の向こうから、奇妙な音が聞こえ始めた。最初は微かな「コツ、コツ」という規則的な響き。時計の秒針の音かと思ったが、どうも違う。もっと重く、湿ったような音だ。

隣の部屋には、最近引っ越してきたばかりの老夫婦が住んでいるはずだった。挨拶を交わした時も、穏やかで物静かな印象だったのに。

音は次第に大きくなり、不規則になった。「ドサッ」「ズルズル」…まるで何かを引きずっているような、あるいは何かを叩きつけているような。心臓が嫌な音を立て始める。まさか、夫婦喧嘩? いや、そんな生々しい声は一切聞こえない。ただ、不気味な物音だけが、壁一枚隔てた向こうから響いてくる。

恐怖に駆られ、耳を澄ませる。すると、物音の合間に、微かに、しかしはっきりと聞こえた。

「…ア…シ…」

人の声だ。しかし、それは苦しげな呻き声のようでもあり、何かを懇願しているようでもあった。そして、その声は、どう聞いても一人分ではない。複数の声が、重なり合っているように聞こえる。

「…ア…シ…テ…」

足音。いや、違う。それは、まるで肉が床を這うような、粘着質な音だった。そして、その音は、壁の向こうから、ゆっくりと、しかし確実に、自分の部屋の壁に近づいてくる。

「…ア…シ…テ…ク…ダ…サ…イ…」

声が、壁のすぐ向こうから聞こえる。まるで、壁に顔を押し付けているかのように。
そして、その瞬間、自分の部屋の壁が、内側から「ドクン」と脈打った。

私は、息を殺して壁を見つめた。壁紙が、わずかに盛り上がっている。
その盛り上がりが、ゆっくりと、しかし確実に、人の顔の形を帯びていく。
そして、その顔の、目にあたる部分が、ゆっくりと、開いた。

壁の向こうから、無数の目が、私を覗き込んでいた。
その目は、どれもが、私に何かを「欲している」かのように、飢えた光を宿していた。

そして、壁から、冷たい声が響いた。

「…アシ…ヲ…クダサイ…」

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関連タグ: #不気味#声#深夜
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