その女性は、暫く黙ってからぽつりぽつりと話し出した。
「…私、高校が一緒だったんです。濱野君と寺田君。」
私「あの二人に何かあったんですか?」
「…虐められてましたよ。寺田君に。助けなきゃって、分かってましたけど、そしたら今度は私が虐めの対象になるだろうなって怖くて出来ませんでした。今思えば、自分が犠牲になってでも助けていればこうはならなかったかなって思います。」
濱野は寺田を憎んでいたのだろう。きっと、死ぬ瞬間まで…いや、死んだ後も。
「一度、忘れ物をして放課後の教室に戻った事がありました。…濱野君は一人で落書きされた机を拭いていました。拭きながら、ずっとずっと、『死んででも、あいつを不幸にしてやる』って呟いてました。濱野君はあの頃からずっと、寺田君を不幸にする為だけに生きてたんだと思います。」
あれは、単なる事故では無かった。濱野茂は、自分を虐めていた相手をこれから先もずっと苦しませる為に命を代償にした。そしてそれは成功した。寺田はこれからもずっと「人殺し」というレッテルを貼られているのだから。
私「お話聞かせていただきありがとうございます。」
「いえいえ。お力になれたなら幸いです。では…」
彼女はそう言って歩き出した。私もそろそろ帰ろうと、歩き出す。
「チャリッ」
何かを蹴ってしまったようだ。自分の足元へ視線を移す。
腕時計だった。
警察へ届け、遺族の方へ渡された筈だった。
…そう言えば、まだ分からない事があった。
何故、彼処にあったのは「白蛇」なのか。
ー ー ー ー ー
「俺は何も悪くない!」
あの日、俺は濱野を轢いてしまった。でも、悪いのは濱野なんだ。
あいつが、あんな事しなければ。あいつと友達になっていなければ。
俺「お前器用なんだな!」
高校入ってすぐの頃、濱野は隅の席で消しゴムをカッターで削っていた。それはとても細かく再現された猫の模様だった。
濱野「…ありがとう。」
それから俺と濱野はよく一緒に話すようになった。
俺「なぁ、今日うちで遊ぼうぜ!」
濱野「うん。」
その日、俺は濱野を家に呼んだ。それがいけなかったのだ。
濱野「わぁ、白蛇だ。初めて見た…」
俺の部屋では白蛇を飼っていた。その白蛇に濱野は釘付けになっていた。
俺「ちょっと飲み物とお菓子持ってくるから待ってて!」


























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