ちゃぶ台の上に置いていた腕時計が、私の向こう側の床へ勝手に落ちた。
何故、机の真ん中に置いていた腕時計が落ちたのだろうと不思議に思いながら拾おうとした。
「はははっ」
男性の笑い声が聞こえた。視線を声のする方へずらす。
そこには記事に載っていた顔写真の男性が居た。口は笑っていても目が笑っていない。
すると腕時計がカタカタと動き出す。
「パリンッ」
腕時計の風防のガラスに亀裂が入った。それと同時に男性は溶ける様に消えてしまった。
その後私は亀裂の入った腕時計を「道に落ちていた」と言い警察に渡した。所持しているのが恐ろしかった。
後日警察から「事故で亡くなった『濱野 茂』さんの物だ」と連絡が入った。被害者の遺族は大変喜んでいたそうだが、私は正直な所あまり喜べなかった。あの時部屋に立っていた男性———濱野茂の口元だけが笑った、不気味な表情が脳内にこびり付いていたからだ。
けれど、まだ何かが頭の中で引っかかっていた。
『白蛇』
私が夢で見た白蛇は、妙に透明感があった気がする。そして、その蛇は微動だにしていなかった。
「ハンドメイド作家」
記事に書かれていた情報。急いでパソコンを開く。
「濱野茂 ハンドメイド」
一番上に濱野茂のホームページが出てきた。ホームページをクリックすると、様々な作品の紹介画像が表示された。
どうやら、シリコンの型にエポキシ樹脂と言われる液体を流し込んで固めて作っている様だった。
「私(濱野茂)はシリコンの型から作っているので、当商品は世界に一つしかない唯一無二の作品です。」
画像には猫や花、蜥蜴なんかもあった。
蜥蜴の型が作れるのなら、「蛇」の型も作れるだろう。あの私が夢で見たあの白蛇は偽物なのかもしれない。
けれど、不可解な点がある。もし、白蛇が置き物だったとしたら事故現場に駆けつけた警察はきづく筈だ。なのにどれだけ調べても「白蛇の置き物があった」なんて記事はない。
私は外に出て、あの白蛇の居た場所へ向かった。何故、事故の後白蛇が消えてしまったのか知りたかったからだ。
昼の明るい時間、其処は事故が発生したとは思えない程普通の道路だった。白蛇の居た場所にも特に痕跡は残っていなかった。記事に載っていた防犯カメラの映像が瞼の裏に流れてゆく。
「防犯カメラ」?
白蛇が居た場所は、防犯カメラの死角だった。濱野茂は防犯カメラに映らないと分かった上で偽物の白蛇を置いたのかもしれない。
「どうかしました?」
背後から女性に声を掛けられた。
私「あの、ここで起きた事故について調べているのですが何か知りませんか?」
「あぁ、あの事故ですか…。」



























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