「…もいませんか?」
ここ最近、嫌な夢を見る。
何故か崖の上に居て、辺りを見渡すと崖のギリギリの所に琥珀色のワンピースを着た女性が遠くを眺めている。そして私はその女性の後ろ姿を見つめている。すると女性がゆっくりと振り返り、何か喋っているのだ。
何時もそこで目が覚める。
茉里奈「で?その女性はなんて喋ってるわけ?」
今日はその事で友人・茉里奈に話を聞いてもらっている。
私「それが…なんて言ってるかよく分かんないんだよね。」
茉里奈「う〜ん…じゃあ、その崖の場所とか女性が誰だとか分かんない?」
私「…あ、そういえば…」
約一ヶ月前、私は一人で旅行をした。その時海の近くの「S崖」という崖に行き、そこにあった小さな石を持ち帰ってしまったのだ。
茉里奈「絶対それじゃん…早く返してきた方がいいよ」
私「そうだよね…」
そう言いつつも、正直私は乗り気じゃなかった。何故ならその石は少し歪な形ではあるものの、他には無い独特な魅力を感じて気に入っていたのだ。それにその崖は新幹線で二時間程掛かる所にあり、普段仕事で忙しい私には到底行けそうに無かった。
それから私は石を返さずにいた。その間も、毎日では無いがあの夢を何度か見た。
今日もまた、その夢を見ていた。
女性が振り返る。
「…たもそう思いませんか?」
目が覚めて、とあることに気づいた。少しずつ女性の言っている言葉が分かる様になり、女性と距離が近くなってきている気がする。…しかも、近づいているのはその女性ではなく私だ。
その時、一通のメールが来た。誰かと思って見ると茉里奈だった。
茉里奈「朝早くにごめん!石ってもう返した?」
私「まだなんだよね…なんとなく気に入ってて。」
茉里奈「今すぐ返しに行って!」
私が返信してすぐに茉里奈から返答があった。
私「今すぐ?なんで?」
茉里奈「さっき、気になって調べてみたんだよね。S崖のこと。そしたらそこ、何人か自殺してたんだよね。人の亡くなった場所の物はちゃんと返した方がいいよ。」
私「だからって、今すぐじゃなくても良くない?」
茉里奈「あのね、そこで亡くなった人、全員その崖の石を握ってたんだって。それで美穂子(私の名前)が心配になって。」
そこで亡くなった人達は、皆石を握っていた。逆に「石を持ち帰ったから」亡くなったのではなかろうか。
私「分かった。ちょっと今から返しに行ってくる。」



























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