午前三時半。私は夜中に散歩をするのが趣味だ。どの家も灯りは無く、この世界は音が消えたかの様に鎮まり返っている。誰ともすれ違わず、私一人で電灯の照らされた道を歩く。空を見上げれば、星がちらちらと燐光を発していた。風が吹いて、近くに生えている木がさわさわと音を立てる。
そんな時間が好きなのだ。
今日も、普段通り夜の散歩をしていた。その時、電柱の下で何かがきらりと光った。何だろうと電柱に近づいた。それは少し古ぼけた腕時計だった。私はその腕時計を拾い上げ、付着していた汚れを手で拭うと美しい金色の文字盤と針が現れた。けれどその腕時計の時間は「三時半」で止まっていた。
本当は警察に届けなければいけないが、私はその腕時計がとても魅力的に見え、ポケットの中に入れて持ち帰った。
その翌日からだった。
今日はやけに眠く、夜の散歩に行かずに寝た。
夢を見た。
あの電柱の前に立っている。手首の腕時計を見ると時刻は三時半、何故か少し離れた所に白蛇が横たわっている。
その時、背後から凄まじい轟音がして私に向かって車が突っ込んだ。
そこで目が覚めた。
全身は冷や汗でぐっしょりと濡れていて、目が覚めてもまだ心臓は早鐘を打っていた。
きっとあの電柱の下で、何か事故があったのだ。そう実感した。
時計を見ると時刻は午前三時半。私はとりあえず、起き上がって水道の冷たい水をコップ一杯飲み干した。
深呼吸をして落ち着くと、私はパソコンを開いた。
「◯◯県◯◯市 事故」
検索をすると、とある記事が見つかった。
「◯◯市にて 電柱の近くに立っていたハンドメイド作家の男性 濱野 茂 さんが車に轢かれ死亡」
防犯カメラに事故の瞬間が映っており犯人 寺田 拓真 はすぐに捕まったそうだ。防犯カメラの映像の一部と被害者の顔写真が記事に載っていた。
映像では勢いよく車が男性に向かって突っ込んでいる。
ここでとある疑問が浮かんだ。
まず、犯人は何かを見て驚き避けている様に見えた。何か道路に動物が飛び出したのではないかと思ったが、映像を繰り返し見ているとどうも違うらしい。じゃあ犯人は何を見たのか。
ふと、夢の内容を思い出す。
白蛇が居た。私の住んでいる場所では蛇なんて見た事が無かった。ましてや白い蛇。そんな珍しい生き物が事故の瞬間に現れるとは信じがたい。犯人は白蛇を見て驚き事故を起こしたのではなかろうか。
そしてもう一つ、何故男性は車を避けなかったのか。車が男性にぶつかるまで、十数秒程ある。男性は車の方に顔を向けていた為、車の存在には気付いていた筈だ。なのに何故、逃げ出さなかったのだろうか。
するととある情報が目に入った。
「被害者 濱野 茂 さんと犯人 寺田 拓真 は高校で三年間同じ教室だった」
犯人と被害者は面識があった。三年間同じ教室なら、話した事もあるだろう。もしかしたらこれは、事故では無く事件なのかもしれない。
そう思った時だった。
「ガタガタッ」


























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