1年後、彼は都会と田舎の中間地点に拠点をつくり、
試行錯誤しながら農業をはじめ、必要な物資は都会から集め
るような生活をしていた。
無人でも源泉かけ流しになっている温泉を見つけ、
そのせいで風呂に入るのも好きになった。
2年後には、廃墟化する家々を見ながらも、農業を成功させ
ていく。成功と言っても自分が食う分だけ賄えればよいのだ。
大規模農業じゃなくてよい。
5年後には安定的に収穫ができるようになっていた。
10年後、それまでに災害にもあって苦労はしたが、
それらを乗り越える力を得た。
彼は55歳になっていたが、健康そのもので、
今や生きていくためのものはすべて自分で作っていけるよう
な、立派なジジイになっていた。
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まぶしい太陽の下、美しく仕上がった田畑を眺め、引き入れた水を見ながら、
ワイは思った。ここ10年間ほどに体験した異世界サバイバル。
それはこれまでの人生の中で最も充実した10年だった。
そしてこれらの体験は、なにも異世界じゃなくてもできる事ばかりだった。
その事に、いまさらながら気が付いた。
この世界は確かに不思議な世界ではあるが、
魔法が使えるわけでもなく、楽しいイベントがあるわけでもなく、
只々「生きる」ことを要求される毎日であり、
それに応えて只々「生きて」きた。
それが充実した人生を送るということだと、いまさらながらに気が付いた。
「ワイ・・・人生やり直したい・・・昔に戻って、ニートなんかヤメて、働くんや!!」
そう強く思った時に、なんだか急に目の前が真っ暗になって座り込んでしまった。
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Mameです。
今回の作品は狭い世界で生きる主人公に、突如として夢のような広い世界が与えられるとどうなるか、
その落差が楽しい作品となりました。
そしてラストは実験的なマルチエンディングとしました。
希望と絶望、そのどちらも楽しめます。
絶望を味わいたくない人は途中で見るのやめてください。
よかったら、あなたがどちらのエンドを選択したか、書き込んでくれると嬉しいです。