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不思議体験

志那羽岩子さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ボタンが足りない
短編 2026/03/04 07:28 174view

そしてもう一つ。

絶対に破ってはいけない暗黙の決まりがあった。

メモに、

「あなたは誰ですか」
「姿を見せてください」

そういうことを書いてはいけない。

昔それをやった人がいるらしい。
その日から、シューターに落とした依頼が一切処理されなくなったという。

便利な存在を怒らせるな。

それだけは皆、真剣に守っていた。

私自身、その存在に助けられたことがある。

繁忙期の夜だった。
疲れで手元が狂い、高価なグラスセットを床に落としてしまった。

粉々だった。

弁償すれば給料が何ヶ月分も飛ぶ。
頭が真っ白になった。

私は泣きそうになりながら、メモを書いた。

「どうしよう。助けてください」

それをシューターに落とした。

翌朝、パントリーの台の上に、グラスが並んでいた。

傷一つなく、元通りの形に戻っていた。

その横に、まだ温かい缶のミルクティーが一本置いてあった。

あの夜、館内には私しか残っていなかった。

それ以来、私はボタンを置くとき、少し頭を下げるようになった。

ただ一つだけ、気味の悪いことがあった。

仕立て屋からの返事は、時々紙片で返ってくる。
古い万年筆の文字で、短く書かれている。

ある日、支配人室の書庫を整理していたとき、戦前の業務日誌を見つけた。

開業当時のものだった。

ページをめくった瞬間、手が止まった。

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コメント(1)
  • 《解説》
    ※いみがわからない人だけよんでください。
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    この言葉の意味は、こういうことだ。

    「次は、後ろを向いている人」

    これは、
    もうボタンでは足りないから、次は人が必要だ
    という意味になる。

    最初、式場の人たちは「地下の仕立て屋」に仕事を頼むとき、
    お礼として 真鍮のボタン を置いていた。

    クロスをきれいにしたり、グラスを直したりしてもらったお礼だ。

    でも長いあいだ、たくさんの仕事を頼みすぎて、
    ボタンだけでは お礼が足りなくなってしまった 。

    だから仕立て屋は言った。

    「まだ足りない」

    そして続けてこう書いた。

    「次は、後ろを向いている人」

    どういうことかというと、
    シューターに紙を落とす人は、いつも 穴のほうを向いている 。

    そのとき、背中は 後ろ を向いている。

    つまり、その人の すぐ後ろ に、
    仕立て屋が立っているかもしれない、ということだ。

    そして「次は後ろを向いている人」というのは、

    今度のお礼は、ボタンじゃなくて、その人自身になる

    という意味になる。

    2026/03/04/07:36

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