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GENGOさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

モリアオガエルの卵
短編 2021/04/03 09:56 2,608view

祖父の家には裏庭があり、その隅には小さな池があった。

私はその裏庭や池が好きではなかった。陰気だったので。
山に貼りつくように建っている家の、その裏なので、
家と山に挟まれて殆ど日がさしこまない。
そこに池があるのだから全体的に湿っているのだ。
池の外観はたとえて言うなら風呂の浴槽のデカいやつ。
普通の家の風呂の2倍くらいの広さだが深さは半分くらい。
コンクリート製で苔むしているが趣きとかはなく味もそっけもない。
一応は水草も生えていたし金魚も数匹泳いでいたが。
今になって思えば、あの池は多分に防火水槽みたいな

存在だったのだろう。

そしてその池には主のようなカエルがいた。
モリアオガエル。
あとになって知ったが、日本固有種で、
水辺に産み付けられた卵からオタマジャクシが生まれ、池で育つ。
だがカエルに成長すると池を離れ山に入り生活し、
産卵期にだけまた池に戻ってくるという習性のカエルだった。
どうりで、常日頃に姿を見かけることが、なかったわけだ。
特徴的なのは珍妙な卵を産むこと。
池の上に張り出すように伸びている草木の枝に、泡の塊のような

卵を産み付ける。大きさはソフトボールより少し大きいくらい。
泡の中に卵があり、孵化したオタマジャクシはそのまま池に零れ落ち、
カエルになるまで池で過ごす。
初夏になり、朝に裏庭に面した縁側のカーテンを開けると、
突然に池のそばに白い泡の塊ができていて、少し驚く。
それがその家での毎年恒例の出来事でもあった。

ただ、卵が産み付けられると祖父がわりとこまめに駆除していた。
枝ごと刈り取って近所の谷に投げ捨てていた。
オタマジャクシが増えすぎると、それを食べに蛇とか来るからだとか、
カエルの鳴き声がひどくなっても煩いからとか、そんな理由みたいだった。

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