俺は神社を一望できる小高い丘に潜伏していた。この丘は、俺が昔よく遊んだ隠れ処だ。勝手は一番よく知っている。
しかし・・・なんだかちょっと様子がおかしい。参加している人間に顔見知りがあまりいない。それに人数がかなり少ない。昨日の叔父の家の火災を見て、みな参加するのを恐れているのだろうか。
全くことごとく馬鹿な連中だ。俺はお前たちには微塵も興味はないというのに、オーディエンスが減るとこの計画のフィナーレに花がなくなってしまうではないか。
「クソッ、クソクソクソッ!」
俺は身をかがめながら足を地面に叩きつけた。どこまで俺の華々しい計画を台無しにすれば気が済むんだ? まあいい。まあいいさ。俺はあいつを殺すことが出来るならなんだっていい。
「フフ、フヒヒ、フヒヒヒヒ」
細い管を空気が通り抜けただけのようなそんな笑い声が俺の口から発せられる。その時、境内から神楽囃子の独特な演奏が流れ始めた。
―――――ピーーーーーピーーヒャラヒャーーーーヒャーーピラピーー
―――――ドドンドドンドン ドドンドドンドン ドココドドンパンッ
神楽笛の音色を皮切りに大太鼓や大拍子を叩く音がそれに合わさる。
俺は舌なめずりした。ああ、なんて素晴らしいのだろう。
この計画の最後が! フィナーレが! それを彩る素晴らしい演奏によってさらに美しさを増している。
「さあ、お前はもうおしまいだァ!」
弦を爪にかけ、弩を構える。火箭にいつでも点火できるよう、ロウソクに火を点けた状態で待機する。鏃の先は真っすぐ、神主が登壇するであろう大舞台を見据えている。狙いはバッチリだ。全てのものが今この時、このためだけに存在している。そんな甘美な言葉が俺の脳内を駆け巡る。本殿の扉が開いた。烏帽子を被り、真っ白な狩衣を身にまとった叔父が姿を現した。
会場から拍手が湧き起こる。叔父が一歩、二歩と徐々に舞台に近づいていく。
三歩、四歩・・・
そして今、舞台の階段に足をつけた。一、二、さ
「紀一郎くん」
突然後ろから声を掛けられ、俺は慌てて振り向いた。
「きさん!なにもんじゃ!」
そこにいたのは一人の少女だった。
「私は月待ミコ。あなたを・・・いいえ、あなたに掛ったその呪いを止めに来た」
何を訳の分からないことを。
「ヒッヒッヒ、もう手遅れじゃ!」
あれ、いま口が勝手に・・・
そんな戸惑いを無視するかのように体がおもむろに動かされる。まるで誰かに操られているみたいに。そして俺は弩を掴みなおし、なりふり構わず引き金を引いた。その瞬間、ものすごい激痛が走る。
























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