因果

26歳 元インターネットカフェ店員

はい、あそこのネカフェでバイトしてたのは、
大学1年の終わりごろから4年になる直前くらいとかでした。
うちの店舗では、休憩中にマンガ読めたり、ジュース飲んだり、
ブースに空きがあれば仮眠とかもできたんで、
結構いいバイト先だったんですよ。時給も悪くなかったし。
はい、まあ、結局辞めちゃったんですけどね。
店長には卒論がどうとか、就活が忙しいとか、
それっぽいことは言いましたけど、本当の理由はバレてるでしょうね。
数人まとめて辞めることになったんで、罪悪感は結構ありましたよ。

えっと、そもそも、そこの先輩から噂に聞いてはいたんですよ。
うちのネカフェは深夜になると、赤ん坊の声が聞こえてくるんだよ、って。
ぼく、結構そういうの好きなんですよ、だから気になってました。
霊の仕業かな、だとしたらなんでネカフェで？とか、
霊なんて全く関係ないとしたら、それはそれで別方向に怖くて面白いな、みたいな。
で、ある日店長からLINEが来たんです。その日の夜勤に欠員が出ちゃって、
急遽ヘルプに出てほしいって内容でした。
夜勤の経験とか一切無いぼくにまで連絡が来るってことは、
相当困ってるんだろうなと思いましたし、
ちょうど暇だったこともあって、OKしたんです。翌日も休みでしたから。

で、いざ夜勤が始まってみると、正直特別何か変わったこととか無くて。
夜勤でしか行わない業務とかも少なくて、まあ正直退屈でした。
だから眠気覚ましも兼ねて、スタッフと受付で雑談してたんです。
そしたら、2時くらいだったかな、マジで赤ん坊の声が聞こえてきたんです。
「オギャー」っていうか、「ウァー」みたいな感じでした。
どこからか、数秒の間隔を空けながら、ずっと泣いてるんです。
でも周りのスタッフは気にも留めてないんですよね。
だからぼく聞いてみたんですよ、なんで？って。
そしたら、実際怖いとは思ってるけど、別に害はないから気にしなければいい。
暗黙の了解みたいになってるんだよ、って教えてくれました。