「S町にある、T慈恵病院地下一階の遺体安置室です。場所はお分かりですか?」
「分かります。
実は私、今その病院にいますから」
「は?」
私は携帯を切ると、病室を出ました。
─父が……さっき、あんな元気だった父が……なんで?
私はエレベーターの壁に頭を押し付け、一人泣きながら呟く。
地下一階まで降りると、廊下の突き当りにある「遺体安置室」のドアをゆっくり開けました。
※※※※※※※※※※
ひんやりとした空気が頬に触ります。
薄暗い十畳くらいの部屋の右側には遺体を保管しているであろう引き出しタイプの四角い容器が、駅のロッカーのようにズラリと奥まで並んでいます。
磨き上げたリノリウムの床の中央にストレッチャーがあり、その上には白い布を被せられた遺体らしきものが横たわっていました。
天井に並ぶ蛍光灯が、ジージーと鳴っています。
傍らに、ヨレヨレのコートを着た中年の男が立っています。
寝不足なのか、疲れ切った顔をしています。
私は入口で男に一礼をすると、ストレッチャーのところまで歩きました。
男は胸元から黒い手帳を出すと、
「F警察の田中と申します。わざわざ来ていただき、ありがとうございます」
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