山道がぬかるんでいたせいでまっすぐ帰ることは容易ではなかった。
俺らは道中、何回も転んでそのたびに泥が口の中に入ってきた。
腐敗臭が辺りを満たし、俺は何回もゲロを吐いた。
思うように力が入らない足腰を何とか奮い立たせ、
鼓膜を破るほどに絶叫する“それら”の鳴き声がこだまする森から、俺らは命からがら逃げ出した。
誰も怪我以上の被害はなかった。
でも、それ以来俺たちは集まらなくなった。
大学を中退したやつもいたな。
この日の肝試しは俺らにとって忘れたくても忘れられない、最悪な思い出になってしまった。
それから俺は神社について色々調べた。
なんでも、あの人面フクロウは「たたりもっけ」というらしい。産まれてすぐに亡くなった赤ん坊の霊がフクロウに入り込んだ妖怪で、あの神社では封印に近い形で祀られていたそうだ。
そして、それを俺らが解いてしまった事になる。
だが幸い俺らには祟りはなく安寧に過ごせていた。
つい最近までは。
こっからは今、最初に書いた嫁さんと結婚してからの話になる。
俺からしたらこっちの方が本題なんだ。
ある日、嫁さんの妊婦健診に付き添っていたときのことだった。
「……どういうことなんだ」
エコー画面を見ながら、医師が呟いた。
嫁さんは泣いてた。
エコーに写ったのは楕円形の輪郭。
目がふたつ、白く光っていた。
くちばしのような突起。
そして羽のようなものが広がっていて、嫁さんが孕んでる”ソレ”が人間で無いことは明らかだった。
俺はその瞬間、すべてを思い出した。
肝試し、神社、たたりもっけ


























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