これは私の妹の話だ。
妹は今年で八歳になる。
ひとりっ子の私にとって、ずっと欲しかった妹だった。
年の差は十三。
親にとっては計画外だったらしいが、私には嬉しい誤算だった。ミルクをあげるのも、オムツを替えるのも、ほとんど私の役目。だから妹は、私にとって半分は妹で、半分は自分の子どものような存在だった。
妹は私を「お兄ちゃん」と呼ぶ。
いくら「お姉ちゃんだよ」と教えても、
「おにちゃんはおにいちゃんなの!」と頑なに言い張る。
そんなところも可愛く思っていた。
だからこそ妹の異変には誰よりも早く気づいた。
あれは妹が六歳、小学校に入って間もない春。
大学から帰ってきて、二人でテレビを見ながらジュースを飲んでいたときだ。
「おにいちゃん、ゆびきりしたもんね」
唐突に、妹がそう言った。
「ん?」
「だから、ゆびきりしたもん。やくそくだよ?」
にっこりと笑うその顔は普段よりも妙に大人びて見えた。
まだ六歳のはずなのに、成人した女が演技で作る笑顔のような歪な表情。
私にはその約束の覚えがない。
けれど子どもの空想だろうと笑って合わせた。
「そうだね、ゆびきりしたもんね」
だが、それは一度きりではなかった。
翌日も、また翌日も──
「ゆびきりしたもんね」
「やくそく、やぶっちゃだめだよ?」
笑い方は日ごとにおかしくなっていった。
目尻が吊り上がり、口角はひくひく震え、笑顔なのに怒っているようにも見える。
ついに我慢できなくなり妹に尋ねた。
「ねぇ、その“ゆびきり”って、いつの話?」
妹は小首をかしげ、無邪気に答えた。























こういった話はよくききます。妹さんはなにかに取り憑かれていたのかもしれません。
前世の記憶…なのか?