「半袖が着れなくなってしまった出来事がありまして」
穂乃果さんは中学生の頃、同級生のとある女の子にヤンチャなイタズラ、包み隠さず言うといじめをしていたという。
あの男子と付き合っていると噂を流したり、教科書を隠したり、話しかけられても無視をしたり。そんないじめ行動のひとつに、軽く腕を捻って痛がっている姿を楽しむことをしていたそうだ。
「雑巾を絞るときようにギュッとやってて。一緒にやっていた子達と、このくらいで痛がってんのってダサいよねとか言ってて」
そんなある日、そのいじめられっ子が登校して来なくなった。
「いろんなことをしてましたし、嫌になって来なくなったんだろうと思っていました」
いじめをする対象がいなくなってしまったので、次の人を見つけ、その子にも同じようなことをしようとしたとき
「やめてやめてやめてやめてやめてやめて」
と、まるで録音した音声を再生したかのように呟いたという。
「ヤバいやつに手を出しちゃったと思ってそこからは何もしなかったんです。でも」
ある日、穂乃果さんはこんな夢を見た。
学校に来なくなったあの子が教室に入ってきた。いつものように腕を掴み、腕を捻ろうとしたとき
「強くなったよ強くなったよ強くなったよ」
と言いながら、雑巾を絞るように穂乃果さんの腕を捻り始めたのだ。
「やめてよと言いながら振り払おうとしたんですが、男の人みたいに強くて全然振り払えなくて」
朝起きたとき、夢にも関わらず腕がジンジンと痛みだした。気にせず登校したのだがどうにも気になるため念のため病院に行くと、打撲の診断をされたのだという。
しかし、若さもあってか痛さはあったものの数日で治った。そうすると、穂乃果さんは仲間たちとまたいじめを再開する。すると夢にあの子が出てきて腕を捻る。病院に行くと打撲の診断。数日すると治り、というのを3回ほど繰り返した後、なんだか君が悪くなってきてきっぱりといじめをやめたのだ。
「大人になってからもそうなんです。仕事とかがうまくいかなくて、SNSに芸能人の文句とか誹謗中傷とかを書くと、あの子が夢に出てきて腕を捻るんです。強くなったよ強くなったよって」
そういったよからぬことを言ってしまった翌朝、腕には薄いアザがついている。まだあの子がどこかで見ている。「それがしばらくの間続いてしまっていたので怖かったんです」と、穂乃果さんは言った。
人に強く当たったり、いじめのようなことを言ったりやったりしてはいけない。今では反省しているという。
「何年も前のことはといえ、そんなことをしていたってことを知られたくないので、私だとわからないようにしてくれたら」
仮名、その他のいじめ内容を伏せてでの公開をご了承頂きたい。
一通り語り終えた後、穂乃果さんが左の袖をまくり肘を見せてくれた。
アザはまだ残っていた。






















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