花を供え、線香をあげようとした時、背後に気配を感じた。振り返ると——喪服姿のIが立っていた。
「こんにちは……」
彼女は目を伏せ、小さな声で挨拶した。
「こんにちは」
私も静かに返した。
奇妙なことに、私たちはこの三年間、毎回この墓前でばったり出会っていた。まるで示し合わせたかのように。
どうやら彼女は、私が墓参りに来る時を知っていて、同じ時間見計らって待っているようだった。
私たちは墓前で並び、しばらく黙祷を捧げた。風が吹き、木々が揺れ、その音だけが静寂を破った。
「あれから、どうしてる?」
私が尋ねると、彼女は少し間を置いて答えた。
「あの人から……結婚を申し込まれたの」
「そうか」
「でも、断った」
彼女の言葉に、私は少し驚いた。
「彼は不倫が原因で奥さんと別れたらしいわ。職場も奥さんの実家だったから、辞めざるを得なかったって。今は再出発を決めて、私と一緒になれたらって……」
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