「お前はどうなんだ?好きだから、あいつと不倫したんじゃないのか?」
彼女は強く首を横に振った。
「違う!それだけは本当に違うの……あの時は苦しくて、どこでもいいからに逃げたくて、ただそれだけだった。だから……本当に好きじゃなかった、それに貴方への想いもあるから、断ったの」
再び同じ言葉を聞いたが、もはや私の心には何も響かなかった。
義理両親からは時折、Iの近況が報告されていた。離婚後は遊び歩くこともなく、毎日パートに追われ、間男の元妻に対して慰謝料を返済し続けているとのこと。
ある意味では、彼女は反省しているのかもしれない。
「どうして……」
Iが突然声を上げた。
「どうしてあのとき、あなたが私のスマホを持っていたの?」
私は少し考え込んだ。そうだった。あの日、気が付いた時には、スマホはソファーに置かれていた。
「あの頃、不倫していた罪悪感から、スマホを見るのが怖くなって……使わない時は、化粧台の鍵付きの引き出しにしまっていたのに」
彼女の問いかけに、私は静かに答えた。
「あいつが持ってきてくれたんだよ」
「え?」
「小さな足音が聞こえたんだ。気がついたら、スマホが隣にあった」
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