「逃げろ!」
俺たちは必死で車に飛び乗り、エンジンをかけた。だが、バックミラーに映る女はどんどん近づいてくる。車の速度を上げても、彼女はすぐ後ろにいた。
「くそっ!」
拓也が悲鳴を上げる。その瞬間――
ガンッ!
何かがフロントガラスに激突した。そこには、女の青白い手がべったりと張り付いていた。
「やめてくれぇぇぇ!」
俺はアクセルを踏み込み、車は急発進した。ようやく橋を渡りきると、突然、女の姿は消えた。
――軽井沢の宿に戻った俺たちは、一晩中震えていた。
翌日、地元の人にこの話をすると、老人がポツリと言った。
「……その橋でな、昔、一人の女が身を投げたんだよ。恋人に裏切られてな。死んだ後も、ずっと誰かを探してるんだと……」
それ以来、俺たちは二度と軽井沢大橋へ近づかなくなった。だが、たまに夢の中で、あの足音が聞こえることがある――
カツ……カツ……カツ……
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