ツイてる
投稿者:たち (33)
「へえー、そえなんだ。」と言うと、3人はまた歩き始めた。
少し歩いていると、大きな囲いが見えてきてその敷地内にそんなに大きくはない工場が見えてきた。
「ここ?」と3人に聞くと、
「そう、ここ。ここ!」
「まだ取り壊されてなかったのか。」
「懐かしいなー。」と道路から敷地内を眺めている。
しかし、どこか寂しそうな雰囲気が漂っているように思えた。さっきまでのテンションとは明らかに違うように感じた。
「何、浸っちゃってんの?」と冷やかすように言うと、
「昔のこと、思い出してた。」
「ああ、ここの人達優しかったし、いい人ばかりだったよな。」
「そうそう、仕事終わってから一緒に話したりしてな。」
私は少しばかり3人が羨ましかった。
「そうなんだ。いいなー、こういう場所があって。なんか、楽しそうだな。」
「ああ、楽しかったよ。」
「倒産しないで残っていればな…」
また3人が黙り込んでしまった。
「敷地も結構広そうだけど、仕事なかったのかな?」と私が何気なく言った。
「仕事はあったみたいだったけど、社長がな…」
「そう、仕事がなくて潰れたというよりは社長の事情で潰れちゃった感じかな。」
「社長?病気で亡くなったとか?」
3人は軽く否定し、
「まぁ、いいじゃん!」
「そうそう!帰ろうぜ」と歩き出そうとしていた。その時、「ん?」
敷地内の真ん中あたりに四角いものが落ちているのに気がついた。
夜なのでハッキリとは見えなかったので、壊れた壁の一部か屋根の一部かと思って目を細めて見ていた。
「どうしたー?」
「何か四角いものが落ちてる。ほら、あそこ。」と私が指を差した。
3人が敷地内を見るとすぐにその四角いものを見つけた。
「どっか壊れた壁とかじゃない?」
「残っていた材料とかかも。」
私は目がいい方で、ジッと見つめて
「かばん?」と呟いた。
それを聞いた3人も見るが、ハッキリとはわからない。
「カバンだったら、警察に届けるようか?」
「俺が行って、見てくるよ。」
と私は3人に伝えた。
「いや、ほっとけよ。」
「そうだ。こことは関わらない方がいい。」
と言い私を引き止めようとした。
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