悲鳴をあげる鮭
投稿者:kwaidan (18)
短編
2024/11/25
08:07
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特に東北地方の冷たい水に住む病原体がサケの体内で異常な発酵を引き起こし、一瞬で腐ってしまうのではないかと考えている研究者もいる。
でも、「悲鳴」をあげることについては、まだ科学では説明できていない。
魚は普通、声を出さないからだ。
一部の専門家は、音の錯覚や未解明の生理現象かもしれないと考えているけれど、多くの漁師たちが同じ体験をしていることから、単なる作り話ではないかもしれないと信じる人もいる。
また、地元の古い伝えによれば、「悲鳴をあげるサケ」は海で命を落とした漁師の魂が宿ったものだと言われている。
「海の底で無念の気持ちを持った漁師の魂がサケに乗り移り、悲しい声をあげる」という話だ。
そのため、村ではこうしたサケを見つけたときには特別な祈りを捧げて供養することもあった。
今では昔のような漁法は使われなくなり、川でのサケ漁も厳しく規制されているため、「悲鳴をあげるサケ」の話はあまり聞かれなくなった。
でも、一部の年配の漁師たちは今でも若い人たちに「青いお腹のサケを見つけたら絶対に手を出すな」と忠告している。
この話には科学で説明できる部分もあれば、昔の人たちの信仰や恐れが混ざっている部分もある。
「悲鳴をあげるサケ」がまた現れる日が来るのか、その真実が明らかになる日が来るのか――この伝承は、語られるたびに新しい謎を生み出しながら今も生き続けているようだ。
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