火男【ひょっとこ】
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/10/01
07:05
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そこにはオカメのような白い顔をした割烹着姿の老婆。
「元来あれは働き者でのう、竈(かまど)の火を竹筒で吹いてから勢いづける仕事を生業としていて、いつの頃か火男(ひょっとこ)と呼ばれるようになりおった。
あれは仕事のない暇な時は、ああして女子供と一緒に踊るのが何より好きでな、、
ほんに困ったもんじゃ」
老婆がそう言うと、嬉しそうに微笑んだ。
私は尋ねる。
「あのひょっとこの後ろに続く人たちは最後、どこに行くんですか?」
老婆は微かに微笑むと、
「暗い暗い闇の世界の片隅に連れていかれてな、最後は朽ち果てて骸(むくろ)になる」
と呟く。
それで私は「その闇の世界に連れていかれたら、もうこの世界には戻れないんですか?」と尋ねた。
オカメ顔の老婆はしばらく考えた風に踊る一団を眺めていたが、やがて「まあ代わりの者が現れたら、戻れるかもしれんのお」と言った後陽炎のようにユラユラ揺れながら霞んでいくと、やがてフッと消えた。
※※※※※※※※※※
そこで目が覚める。
再び私の視界には、前の長椅子と暗い車窓が飛び込んできた。
相変わらず正面の長椅子には誰も座っていない。
それからほっと一息つき、一つ大きなあくびをした時だ。
突然車内がチカチカ明滅を繰り返しだした。
━え!
焦りながら辺りを見回すと、車内は最後暗闇に包まれた。
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早速のコメントありがとうございます。
━ねこじろう