火男【ひょっとこ】
投稿者:ねこじろう (147)
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やがて視界には、
見上げるくらいの目映い朱色の炎が、夜空を突き破るほどの勢いで立ち上っているのが飛び込んできた。
パチパチという弾ける音を伴い、火の粉が四方八方に飛び交っている。
圧倒されるくらいの迫力だ。
私は唖然としながら辺りを見回す。
どこかの神社の境内だろうか?
勢いよく立ち上る炎の向こう側には、寝殿造をした本殿や石堂ろうが見え隠れしていた。
━これは夢?私は夢見てるの?
しばらくただ呆然としてそこに佇んでいると、どこからだろう?笛や太鼓の陽気な囃子が聞こえてくる。
それは祭りとかでよく聴く懐かしい音色。
思わず音の出所を目で探してみた。
すると右側奥まったところにある鬱蒼とした木立の狭間から、人の一団が姿を現してくる。
━何だろう?
私は目を凝らす。
目映い朱色の輝きを背景にし、先頭にはくねくねと体を器用に捻り踊りながら歩き進む奇妙な風体の男。
口元を奇妙にねじ曲げたその顔はひょっとこそのもので紺色の着物の裾を捲り、陽気な笛や太鼓にあわせてただひたすら踊りながら進んでいる。
その背後に従う人々も、同じように体をくねくね捻りながら踊り進んでいた。
子供、若い男女、、
皆焦点の合わない二つの目で薄ら笑いを浮かべ、ぎこちなく手足を動かしている。
やがて彼らは列を為して、炎の周囲をぐるぐる周りだした。
「ほんに困ったもんじゃ」
突然背後から聞こえた低く掠れた女の声に、私は驚き振り向く。
早速のコメントありがとうございます。
━ねこじろう