子供が大人になるまでは

死ぬ覚悟のあるオレに、花音が意見をしてきた
蝶子の幽霊に謝って許してもらえと言うのだ
残念ながら、あの女の凄まじい性格では、それは無理だろう
ならばせめて前妻や息子たちに、今までの苦労を謝って、許してもらえとも言うのだ

確かに前の家族には、たくさん迷惑を掛けた
だが何度 謝っても、許してくれないから無理だろう
オレだって迷惑を掛けたくて掛けた訳ではない
仕方がなかったのだ

お兄ちゃんたちが結婚する気がないのは、パパを受け入れられないからだよ、と花音は言った

過去は変えられないのだから、未来だけを見て行動した方が効率が良い

彼らも過去は忘れてそうすべきなのだ
何事も合理的に判断した方が良い、と娘に説教をした
オレは花音に言った
「息子たちは蝶子の命日に来てくれると言っていたぞ。何だかんだ言っても我が子だ、父を心配して、見守りに来てくれるじゃないか。つまり、
本心では、それほどオレを嫌っていないということだ」
「パパ、お兄ちゃんたちが来るのは、パパの死ぬところを見たいだけだよ。だからお兄ちゃんたちと仲直りして、皆で蝶子さんにお願いしてみようよ」
と娘は言ってくれたが、それは蝶子を知らないからだ
「そりゃ無理だ」
あの並外れて凄まじ過ぎる幽霊を見たら、あまりの恐怖に何もできなくなるだろう

※※※

蝶子の命日当日

ついにこの日がやって来た
ママは怖いからと、明子さんの家に避難した
家族全員が、私にも避難するように言ってくれたが断った
今、家にはパパと私、3人の兄が待機している

毎回テレビ画面から出てくるなら、テレビをどかしちゃおう、と提案したが、パパによって却下された
パパは、
「テレビがなくなったら、違う所から出ると思うんだ、どこから出てくるか分からない方が怖いよ。
それに何よりも、もう覚悟は決めたから！」
と言った
普段、優柔不断な人とは思えない断固とした発言に、兄たちも少しはパパを見直したようだった