子供が大人になるまでは

次に明子さんに、パパから聞いた話を伝えた

「お誕生日おめでとう。
ついに花音も私たちの事情を知ったのね。
あの人には、とんでもない目に遭わされてばかりだったわ。
不倫に始まり、借金や病気、幽霊、宗教、強いられた出産、最後は不倫で終わった結婚生活…私が妻だった頃、どれだけ辛酸を嘗めてきたか。
一番許せないのは、息子たちに満足な教育をさせられなかったことよ。
だから、もう関わりたくないの。
あの人は後1ヶ月で死ぬみたいだけど、本来ならもっと前に死んでる筈だから、潔くあの世へ行って欲しいわ。
もちろん花音と綾香さんのことは大好きだから、これからも宜しくね！」

こちらも本音だろう

兄たちにも聞いてみた

3人とも、まず私の誕生日を祝ってくれた
そして私がパパの事情を知ったと分かると、自分たちの心情を隠さなくなった

皆、同じようなことを言っていた

・母を苦労させて病気にし、更には捨てた父を許せない
・うら若い女性を騙したことも、息子として恥ずかしい
・自分たちの名前に、父の名前の字が入っているのが嫌だ、花音は入っていなくて羨ましい
・父の息子であることが嫌すぎて、結婚は一生できないだろう

・蝶子さんの命日は、クソ親父が死ぬところが見たいので立ち会う

今回初めてハッキリ言われて、改めてパパがそんなに嫌いだったのかと衝撃を受けた

別にパパを立派な人だとは思っていない
50才で私が生まれたから、最初から年寄りだったし、落ち着きもないし、そそっかしいし、それでも私にはたった1人の大切な父なのだ

来月に幽霊が出てくるらしいけど、私は立ち会い、叶うことなら父を連れて行かないでと、お願いするつもりだ

本当は兄たちにも協力して欲しかったが、無理そうなので、私1人でやってみようと思う

※※※

命の期限まで、後1ヶ月

オレは穏やかな気持ちで、持ち物の整理をした
妻子の為のお金は あまり残せなかったが、何かあっても息子たちが何とかしてくれるだろう
皆、綾香や花音のことは気にしてくれてたから、きっとこれからも助けてくれる