冥界のトンネルで出会った二人の女の子の話
投稿者:ねこじろう (154)
そしてもう一人はその子より頭一つくらい小さな背丈をしたボンヤリした人型のシルエットで、隣の女の子に寄り添うようにして立ってました。
それで近づいて見ると白いドレスの子は服があちこち泥だらけで首には痛々しい青アザがあったから『あなた大丈夫なの?』て聞くと、女の子は自分の首辺りを触りながら『絞められたの』と言うから『誰に?』と尋ねたんです。
すると彼女急に怯えるような表情になって口をつぐんでしまって、それからはしばらく黙ってたんだけど、また突然口を開くと今度は『沼の近くでね、沼の近くで』と泣き顔で何度も繰り返しだしました。
だから私『沼の近く?沼の近くって、どういうこと?』と彼女に尋ねたんだけど、また口をつぐんでしまって終いにはまた二人でトボトボ歩き出したの。
そして私の前を通り過ぎて背後の暗闇の方へと行こうとしたから私思わず『ちょっと待って、あなたたち名前は?』と尋ねたんです。
そしたら白いドレスの方だけが振り向いてから『わたしは麻実』と言い、また前を向くと歩き出して最後は見えなくなりました。
それから再び私光の方へ歩き続けたらようやく外に出ることが出来て、気が付いたらここの病室のベッドに寝ていたんです』
Sさんに女の子が言った最後の言葉に私は大きなショックを受けました。
というのは「麻実」というのは行方不明になった女の子の名前だったからで、後でSさんからトンネルで出会った女の子の風体を詳しく聞いたところ姿を消した時の麻実ちゃんとほぼ同じでした。
麻実ちゃんが失踪したのはSさんが病院に来る前のことですから、もちろん彼女がそのことを知る由もありません。
半信半疑ながら私は警察の人にSさんが話した一部始終を伝えたんです。
話を聞いた警察の人は最初のうちは軽く受け流すような態度だったんですが、捜索が行き詰っていたこともありまた私があまりに真剣な表情をしてたせいか、最後は真剣に受け止めてくれて『分かりました。この話を参考にもう一度捜索してみます』と言ってくれたのです。
結論から言うと信じられないことにそれから一週間も経たないうちに麻実ちゃんは見つかりました。
ただ残念ながら変わり果てた姿で。
着ていた白いドレスは泥だらけで首には絞められたようなどす黒いアザがあったそうです。
発見されたのは病院裏手にある竹藪の中で奥まったところにある沼の近くだったそうです。
検視の結果、麻実ちゃんの死因は首を絞められての窒息死ということでしたから警察は殺人事件として捜査を開始しました。
そして一月後には犯人と思われる者が逮捕されます。
それは驚くべきことに麻実ちゃんの母親でした。
もともと普段から麻実ちゃんは母親からDVを受けていたらしく、病院に救急搬送されたのも母親から鈍器で足を殴られたことが原因だったようです。
事件当日、母親は防犯カメラの死角を巧妙について麻実ちゃんを外に連れ出し、病院裏手にある竹藪の奥まったところにある沼の近くで殺害し遺棄したということでした。
その後如何にも見舞いに来たかのようにしながら、娘が消えたと騒ぎだしたということです。
母親が麻実ちゃんに手を掛けた理由は、ギャンブル狂いで酒乱である旦那の連れ子だった麻実ちゃんに対する理不尽な憎しみからだったということでした」
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最後に関屋さんはこう付け加えます。
「もしかしたらあの時麻実ちゃんの隣にいたという小さな黒い影は、生まれてくる予定だった私の子供だったかもしれませんね。
だって麻実ちゃんあんなに赤ちゃんに会いたいって言ってたから、、、
麻実ちゃんは私の子供に促されてSさんに本当のことを打ち明けたのかも、、」
悲しい
コメントありがとうございます
─ねこじろう