これは中学生の頃に体験した話だ。
当時自分が住んでいた場所はとても田舎で、家も山あいにあり、帰宅が遅くなった時は
いつも暗い夜道を帰る必要があった。
いつもは自転車で学校に通っていたが、その時はあいにく帰宅の際に自転車がパンク
したため、学校に自転車を置いて、徒歩で帰ることにした。
学校から家までは民家もまばらで、田んぼしかない場所や薄暗い雑木林の間を抜けて帰る
必要があった。
いつもは自転車だったため、部活で遅くなって暗い夜道を帰ることになっても、
自転車のライトに勇気づけられて、とくに怖いと思うことはなかった。
たださすがに誰もいない田舎の夜道を歩くのは、中学生にとってはまあまあの恐怖だった。
帰宅途中に200メートルほどの直線の一本道、街灯もまばらで右手は田んぼ、左手には
雑木林という場所があった。
いつも帰りに通る道だし、子供のころから知り尽くした土地ではあったが、やはり夜道を
歩いて帰るのは不気味だった。
暗闇に包まれた田舎の夜道。街灯の微かな光が一本道を照らしているだけだった。
自分だけの足音が聞こえているなか、誰もいないと思っていたはずの雑木林から、
不気味な音が聞こえた。
何かくぐもった音だった。
はっとしてそちらを向くが、そこには何もない。暗い雑木林に目をこらすが、
黒い木々の影が揺れているだけだった。
不安を感じながらも、足早に帰ろうと前を向いた途端、目の前に人影があることに気づいた。
さっきまで自分一人が歩いていたはずだが、今は15メートルほど先に誰かが歩いていた。
確かにさっきまでは誰もいなかったはずなのに。
突然の人影に心臓が高鳴る。怖い・・・・。
ただそれでも、もしかしたらその人影に自分が気づいていなかっただけかもしれない。
それに帰宅するにはこの道を進むしかない。
なんとか勇気を振り絞って一本道を進んでいく。
前の人と距離を取りながら歩いていたが、しばらくして前の人影が突然立ち止まった。
さっきまで15メートルほどの間隔があったが、急に10メートルまで縮まった。
えっ?と思った瞬間、突然肩に掛けていたバッグが何かに後ろから引っ張られた。
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