暗闇の一本道と雑木林
投稿者:みーやっき (2)
それほど強い力ではなかったが、確かにバッグがくいっと後ろに引っ張られて
右肩が軽くのけぞる。
驚きよりも反射で後ろを振り向いたがそこには何もいなかった。
ただ薄明りの街灯の明かりがあるだけだ。
そしてその瞬間に前方の人のことを思い出てし、前を向く。
その人影は姿を消していた。さっきまで目の前にいたのに、いまは誰もいない。
右手の田んぼの方を確認する。暗い中だがそこに人の気配はなかった。
続いて左手の雑木林の方を見てみた。
真っ暗な木々の間にそいつはいた。
さっきは10メートル先にいたのに、いつのまにか真横の雑木林の中に立っていた。
その場所の雑木林は斜面になっていたため、左手の少し高い場所にいた。
真っ暗でそれがだれかは確認することはできなかったが、街灯のかすかな光で、
そこに人が立っていることだけは確認できた。
思わず息をのんだ。もし彼が目の前の道路から雑木林の方に移動したのであれば、
林の中を移動する音で気付かないはずがない。
しかしそんな気配はいっさいなく彼はいつのまにかそこにいて、少し高い場所から
自分を見下ろしていた。
あまりのことに目を離すことができずにその人影を見ていると、その影がすこし膝を曲げて
屈伸をしたように見えた。しかも屈伸に合わせて両腕を前に振り上げようとした。
その動作が大きくジャンプするときの予備動作だと気付いた瞬間、振り返って全力で
駆け出していた。
そのまま全速力で前方に駆け出せば、200メートルほどで民家がある場所にたどり着くのは
分かっていたが、その間は暗い雑木林が続いている。
その時は何故かそこを通ってはいけないと感じた。
とにかく振り返り、さきほどまで歩いてきた道を全速力で駆け戻った。
走り始めた瞬間、後ろでなにかが着地するような音が聞こえた気がしたが、
走っている間は一切振り返らず、ひたすら走り続けた。
息が切れ切れになりながらも、なんとか学校の近くまで走って戻った。
そこまで来れば民家もあり、人の生活がある場所だったため、安心できた。
そして学校近くにある友達の家を訪ね、自転車がパンクした事情を説明し、電話を借りて、
家の人に車で迎えに来てもらった。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。