リュックに入っていた古いテープレコーダー
投稿者:ねこじろう (154)
それから再びそこに中座すると、レコーダーの電池を新しいものに取り換えた。
そしてさっきの川沿いの岩まで行って座ると膝の上にレコーダーを乗せてから、少し緊張しながら再生ボタンを押してみる。
※※※※※※※※※※
ボリュームを上げ耳を澄ます。
すると突然Sの耳に聞きおぼえのある懐かしい音楽が飛び込んできた。
彼は記憶の糸を懸命に手繰り寄せる。
─えーと、これは、、、
そうだ、これは昔再放送で見たことのある特撮ヒーロー番組のテーマソングだ。
賑やかなテーマソングはしばらく続くとやがて止み、今度は男の子の掠れた声が聞こえてきた。
「1980年8月。
今日は夏休み最後の日曜日だ。
珍しくパパママが季節外れのキャンプ場に遊びに連れてきてくれた。
一生の思い出を残すためにこれから、去年のクリスマスにプレゼントしてもらったテープレコーダーにバレないようにいろいろ録音しようと思う。
後で二人に聞かせてびっくりさせるためだ」
それからしばしの無音の後、途切れ途切れに年配の男女の話し声や笑い声がしたり男の子の楽しげな声がしたり、また無音が続いた後三人の声がランダムに聞こえてきたりする。
音声から推測すると、
小学生の息子が両親と時期外れのこのキャンプ場に来た日に、両親にバレないよう車内やキャンプ場での会話を適当に録音しているもののようだ。
そんな感じで音声は15分ほど続くと、再び男の子のボソボソ囁くような声がする。
「今は午後5時30分だ。
大分日も暮れてきたみたい。
夕日がとってもきれいだ。
今日は生まれて初めてパパママとバーベキューも出来たし水遊びも出来たし、本当に楽しかった。
いつもは喧嘩ばかりしていたパパママも珍しく今日は仲良かったし、本当に良かった。
なにより普段は家にじっとしているパパが僕と一緒に遊んでくれたのが、すごく嬉しかった。
(しばらく無音が続いた後、遠くからする年配の男性の声)
『おーい雄一~そんなところで何やってんだあ!?お前もこっちに来いよ~』
なかなか面白かったです。
こういう作品好きですね
ワクワクするタイトル
怖いというよりも悲しい
皆様、コメントありがとうございます。
とても創作の参考になります。
─ねこじろう