(また男の子の囁くような声)
おっとまずいまずい。
どうやらパパが来いって言ってるみたいだ。
パパときたらあんな林の中に車停めて秘密基地みたいだろ?ってフフフ、、でも何かワクワクするね。
じゃあちょっと行ってくる、、、」
ここで音は途切れ、その後は無音が続いた。
しばらくそのままテープは回っていたのだが、やがて終わり自動で再生ボタンは上がる。
その後もSは膝の上のレコーダーを直視したまま固まり、動くことが出来なかった。
太陽は既に西の彼方にある山の背後にその姿を隠そうとしており、Sのいる広い砂利地も朱に染まっている。
少し離れたところの地面にあるボロボロのリュックもそのアウトラインを印象的に浮かび上がらせていて、彼はそれにちらりと視線をやった後考えた。
─どうして男の子はリュックを忘れたんだ?
あんなに両親に聞かせようと楽しみにしていたテープレコーダーも入っていたというのに、、
そしてテープは最後、男の子が父親のいるところに行くと言うところで突然終わっている。
息子はそれからどうなったんだ?
なぜだろう、Sの心臓の拍動は徐々にテンポを上げだしている。
生暖かい汗が額をつたい、顎先からポトリと落ちた。
※※※※※※※※※※
その時だ。
「お~い、そんなとこで何してんだ~?」
突然背後から聞こえるすっとんきょうな男の声。
驚いて振り返るS。
視界に飛び込んでくるのは、所々雑草の生えた砂利地とその向こうにある鬱蒼とした林。
その林のちょうど手前辺りに男が立っていた。
灰色のくたびれたジャケットを羽織り黒い影のような顔をした男が手を振りながら、こっちにこいよと言っている。
なかなか面白かったです。
こういう作品好きですね
ワクワクするタイトル
怖いというよりも悲しい
皆様、コメントありがとうございます。
とても創作の参考になります。
─ねこじろう