ハーメルン
投稿者:綿貫 一 (31)
あるいはチョークで、あるいは油性マジックで、あるいはペンキのようなもので。
探せば矢印は、延々と続いていました。
それは、どれもごくごく地上から近いところに。
大人の目には付かないところに。
子供の目には付くところに。
そんなところに、コッソリと描かれていました。
私は、陸の手を引き、矢印を追いかけながら、この行為をした人間に激しい怒りを覚えていました。
そう、怒りでした。
コイツは――この矢印を描いた犯人は、街中にこうやって「罠」を仕掛けたに違いないのです。
小さな子供たちに対して、点々とヒントを出すことで、最終的に側溝だったり、溜め池だったり、蓋の外れたマンホールの穴だったりといった、危険な場所に導くのです。
そんな酷いことを、きっと、ニヤニヤ嗤いながらやったのです。
私の大切な陸を。
私たちの大切な子供たちを――。
――許せない!!
私は、怒りで頭が沸騰するのを感じました。
塀の下「→」
電柱の影「→」
門柱の足元「→」
夢中になって次の矢印を探していました。
夢中になりすぎて、私はしばらく気が付きませんでした。
自宅は、もうすぐそこだったのです。
怒りで熱くなっていた身体に、不意に冷気が滑り込むのを感じました。
もし、この矢印が街中の子供たちに、無作為に向けられたもの――では、なかったら。
ここはもう、自宅のすぐ近く。
この矢印が、誰か特定のひとりのために描かれたものだったとしたら。
ああ、もうすぐ家に着く――。
ご近所の鶴田さんの家の、塀の下「→」
三軒隣の向井さんの家の、門柱の足元「→」
お隣の佐々木さんの家の前の、電柱の下「→」
そして、
ハラハラドキドキ面白かったです。
読みやすく面白かったです
犯人は誰だろう?
お母さんやお父さん…じゃないしな