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不思議体験

綿貫 一さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ハーメルン
長編 2024/01/17 21:36 7,642view
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あるいはチョークで、あるいは油性マジックで、あるいはペンキのようなもので。
探せば矢印は、延々と続いていました。

それは、どれもごくごく地上から近いところに。
大人の目には付かないところに。
子供の目には付くところに。
そんなところに、コッソリと描かれていました。

私は、陸の手を引き、矢印を追いかけながら、この行為をした人間に激しい怒りを覚えていました。

そう、怒りでした。
コイツは――この矢印を描いた犯人は、街中にこうやって「罠」を仕掛けたに違いないのです。

小さな子供たちに対して、点々とヒントを出すことで、最終的に側溝だったり、溜め池だったり、蓋の外れたマンホールの穴だったりといった、危険な場所に導くのです。

そんな酷いことを、きっと、ニヤニヤ嗤いながらやったのです。

私の大切な陸を。
私たちの大切な子供たちを――。

――許せない!!

私は、怒りで頭が沸騰するのを感じました。

塀の下「→」
電柱の影「→」
門柱の足元「→」

夢中になって次の矢印を探していました。
夢中になりすぎて、私はしばらく気が付きませんでした。

自宅は、もうすぐそこだったのです。
怒りで熱くなっていた身体に、不意に冷気が滑り込むのを感じました。

もし、この矢印が街中の子供たちに、無作為に向けられたもの――では、なかったら。
ここはもう、自宅のすぐ近く。
この矢印が、誰か特定のひとりのために描かれたものだったとしたら。

ああ、もうすぐ家に着く――。

ご近所の鶴田さんの家の、塀の下「→」
三軒隣の向井さんの家の、門柱の足元「→」
お隣の佐々木さんの家の前の、電柱の下「→」
そして、

6/7
コメント(3)
  • ハラハラドキドキ面白かったです。

    2024/01/20/01:28
  • 読みやすく面白かったです

    2024/01/27/11:07
  • 犯人は誰だろう?
    お母さんやお父さん…じゃないしな

    2024/01/30/01:27

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