ハーメルン
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2024/01/17
21:36
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私の家の前の道路「→」
背中を、冷たい汗が流れました。
私は、自宅の周りを目を皿のようにして見て回りました。
「それよりも前の矢印」を探して。
しかし、ありませんでした。
自宅の前の道路に描かれた矢印。
これがどうやら、はじめの一つ。
つまりは、さっきまで辿ってきた矢印は。
行き着く先が、あの暗いマンホールの穴だった矢印たちは。
すべて私の子供――陸の「ために」描かれたものだった、ということです。
呼吸が荒くなるのを感じました。
頭の芯が熱くなります。
逆に、身体の芯は冷たくなっていきました。
私は急いで玄関の鍵を開けると、陸を家の中に押し込めました。
「お部屋に行ってなさい!」
思わず、きつい口調で叫んでしまいました。
私は、ドアの隙間から家の周りを見まわしながら、携帯を取り出すと夫の連絡先に電話をかけました。
仕事中だと言われるかもしれませんが、気にしてはいられません。
今見たこと、考えたことを夫に聞いてもらって、相談をしなくては、と思いました。
なかなかつながらない電話に、イライラしながら玄関の鍵を閉めます。
その時ふと、何かが視界の端に映りました。
玄関の、下駄箱の下部分に。
そして今、陸が駆けていった、子供部屋の入り口正面の壁に。
赤い絵具(血?)のようなもので、「→(それ)」は、描かれていたのでした――。
〈了〉
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ハラハラドキドキ面白かったです。
読みやすく面白かったです
犯人は誰だろう?
お母さんやお父さん…じゃないしな