奇々怪々 お知らせ

不思議体験

綿貫 一さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

ハーメルン
長編 2024/01/17 21:36 7,643view
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私の家の前の道路「→」

背中を、冷たい汗が流れました。
私は、自宅の周りを目を皿のようにして見て回りました。
「それよりも前の矢印」を探して。

しかし、ありませんでした。
自宅の前の道路に描かれた矢印。
これがどうやら、はじめの一つ。
つまりは、さっきまで辿ってきた矢印は。

行き着く先が、あの暗いマンホールの穴だった矢印たちは。
すべて私の子供――陸の「ために」描かれたものだった、ということです。

呼吸が荒くなるのを感じました。
頭の芯が熱くなります。
逆に、身体の芯は冷たくなっていきました。

私は急いで玄関の鍵を開けると、陸を家の中に押し込めました。

「お部屋に行ってなさい!」

思わず、きつい口調で叫んでしまいました。

私は、ドアの隙間から家の周りを見まわしながら、携帯を取り出すと夫の連絡先に電話をかけました。
仕事中だと言われるかもしれませんが、気にしてはいられません。
今見たこと、考えたことを夫に聞いてもらって、相談をしなくては、と思いました。

なかなかつながらない電話に、イライラしながら玄関の鍵を閉めます。
その時ふと、何かが視界の端に映りました。

玄関の、下駄箱の下部分に。
そして今、陸が駆けていった、子供部屋の入り口正面の壁に。

赤い絵具(血?)のようなもので、「→(それ)」は、描かれていたのでした――。

〈了〉

7/7
コメント(3)
  • ハラハラドキドキ面白かったです。

    2024/01/20/01:28
  • 読みやすく面白かったです

    2024/01/27/11:07
  • 犯人は誰だろう?
    お母さんやお父さん…じゃないしな

    2024/01/30/01:27

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