ドリームボックス 2.0
投稿者:kana (217)
駐在を襲った際に集まって来た野犬の中に白いスピッツに似た犬がおり、それが一緒に付いて来てしまっていたのだ。体全体が白く、耳だけがキレイなピンク色をしており、トリミングにかければかなり可愛くなる素質があった。こんなかわいい犬まで野犬化していることに、男はややショックを受けていた。日本では近年野犬が増え続けており、その対策に頭を悩ませる自治体も増えていた。こんなかわいい犬でも捕まればドリームボックス行きである。
「クーシー、どうする?この子・・・名前つけてやるか・・・」
クーシーもこの白い犬が気に入ったようで、仲良くじゃれあう姿が見られた。
「ノール・・・とか、どうかな・・・」男はそうつぶやいた。
「子どもの頃・・・飼ってた犬の名前・・・白くてさ・・・」男は少し眠ることにした。
・・・・・・
大勢の靴の音に一瞬体がビクっとなり、男は目覚めた。
見ると警官が2名、それを案内する倉庫職員らしき人物数名が捜索に訪れていた。道路の検問だけではなく、空き家や逃げ隠れできそうな建物へも捜索範囲を広げているという事だ。
クーシーを見ると、さきほどの白い犬と仲睦まじく体を寄せ合っている。
「ははは、クーシーそんなにその子を気に入ったのかい。お嫁さんにしたいところだけど・・・残念、ボクらにはもうその時間はないようだ。この子を危険な目に合わせるわけにはいかないよ。悲しいけど、お別れの時間だ」
クーシーがしんみりした顔で男を見る。そして白い犬(ノール)の顔をペロペロ舐める。
「よし、逃げるぞ」
1人と2頭がゆっくりと足音をさせずにその場を後にする。
が、白い犬は良く目立つ。男は後に付いてくるノールとここでお別れすることにした。
「ノール、ここから先は本当に危険だ。付いてきちゃダメだ」
すぐそばにトラックが停まっていた。男はノールを抱きかかえると、その荷台に滑り込ませ、一旦隠す事にした。
「よし、ノール、しばらくここに隠れているんだ。この奥で大人しくしているんだよ」
クーシーも荷台に足をかけ、ノールを見つめながら最後のお別れをしているようだった。
素早く去って行く男とクーシー。
だが、少し遅かったようだ。倉庫の外にも警官がおり、大きな犬を連れた男はすぐに見つかってしまった。
「いたぞ!」現場に緊張が走る。無線で本部に連絡を入れる警官。
4人の警官が男と黒い犬を追う。
男は、倉庫裏手にある山の方へ逃げようと考えたが、追い詰められ、仕方なく別の港湾倉庫に逃げ込んだ。だがそれもすぐにバレ、警官隊が倉庫内に入って男を隅に追い込んだ。もう逃げる場所はない。男はフォークリフトの並ぶ一角に隠れたために警官隊から直接見ることはできなかったが、そこに身を隠したのは確かだ。
男が拳銃を所持している疑いがあるため、警官隊もバリケードを築いてそれ以上近づかないようにして包囲した。応援部隊として後から駆け付けた部隊には警察犬もいた。黒い犬対策としてこちらも犬で対抗しようと考えてだ。だが、それは後ほど裏目に出ることになる。警察犬たちはこの黒い犬包囲網の中でヤケに緊張しており、落ち着きがない。
「キミは完全に包囲されている。キミには警察官殺害と拳銃強奪の容疑が掛けられている。無駄な抵抗はやめ、武器を捨ててただちに投降しなさい!! キミには法の下、平等に弁護の機会が与えられる。大人しく出てくればキミの身の安全は保障される」
警官隊の説得の声が男の耳にも入る。
「どうする、クーシー・・・やっぱり警官は食べちゃダメだったね。一人暮らしのお年寄りや浮浪者を食べた時はぜんぜん騒がれなかったのに、警官を食べたら急に包囲しはじめちゃうんだもんなぁ・・・」
クーシーは男の横で舌を出しながらニヤリと笑ったような顔になっていた。
「なにが楽しいんだよ。お前は~・・・それにしても、あとちょっとだったのになぁ」
男はリュックの中から書類を取り出して眺めた。パスポートにチケット、それにクーシーの検疫証明書などの書類だ。実はクーシーはまだ仔犬だったころに動物保護を目的とするNPO法人の手によって狂犬病やフィラリアなどの予防接種を受けており、検疫証明書をとることは難しくなかった。そして男にはそのような知識があった。なぜなら、男はそのNPOで働いていた職員だったからだ。
kamaです。以前書いた犬のお話、ドリームボックスの続編を書かせていただきました。
前作は割と人気作品のようで、多くの朗読者様にも読んでいただきました。感謝です。
そのまま終了してもよかったのですが、韓国でも朗読され人気になったようで、
別作品の「母の生まれた謎の集落」を書いたときにコメント欄で韓国のお話みたいと言われたのが
ヒントとなり、一度韓国がらみの作品を書いても良いかなと思い、この呪われたブラックドッグを
韓国に渡らせることにしました。・・・と言いたいところなのですが、本編ではご覧の通りとなりました。ボクはこのつづき「ドリームボックス3.0」は書くつもりはありませんのでこれで終わりにしたいと思いますが・・・どうなんですかね。韓国と言えば橋が折れたりビルが倒壊したり、金融危機に陥ったり・・・もしかして、もうブラックドッグたちはとっくに渡っているのかもしれないですね・・・。
わたしとしては、呪われたブラックドッグがライフルで狙撃され良かったと思ったのに、お腹に赤ちゃんを宿しながら・・・続きがあると思いきや、なんと3.0が無いとはとても残念。
しかしながら、面白かったです。
↑コメントありがとうございます。
まぁ3.0のお話は韓国が舞台になるでしょうからね。ボクは韓国は行ったこともなければなんの知見もありませんので、リアルにお話を書いていくことができませんし。
まぁでも、3.0希望の声が多数寄せられたら、乗せられやすいタチなので韓国取材はじめちゃうかもしれませんけど~。・・・でもまぁとりあえずこの辺にしときます。
・・・続き書きたい人に書かせてあげるって手もあるかなぁ・・・