ドリームボックス 2.0
投稿者:kana (210)
彼は警察と一緒に黒い犬の捜索に当たっていたはずだったが、山奥で黒い犬を見つけた時に、どうしても警察に引き渡すことができず、それからというもの、できるだけ人目に付かないようにしながら逃亡生活のようなことをしていた。
そうしてこの港町に現れたのは、ここから出る韓国行きのフェリーに乗り込む手はずだったからだ。しかし今となってはそれも夢か・・・。書類をぎゅっと握りしめたが、破り捨てることができずにまたリュックの中にしまい込む。
男はヤケになって警官隊に向けて拳銃を一発撃ってみた。
「道を開けろ! 俺たちにかまうな!!」
初めて撃つ拳銃なので操作方法も良くわからなかったが、警官隊に向けて引き金を引いてみると、思いのほか簡単に弾は発射された。小さくてオモチャのように軽い拳銃だったが、やはり本物。大きな音と、ガツンと強烈な反動を感じた。だが弾はあさっての方向に飛び、どこかの壁にめり込んだようだ。
警官隊に緊張が走る。
「容疑者発砲!!」
「拳銃構え!!」
包囲していた警官隊が拳銃を抜き、構える。
この時、黒い犬が低く大きな唸り声をあげた。それを聞くや警察犬たちは何を思ったのか、拳銃を構えた警官たちの腕に噛みつき始めた。警官隊がそれに対処するために大きく乱れることになった。
黒い犬がさらに遠吠えを始めると、いよいよ警察犬たちが狂ったように警官に噛みつく。言うことをまったく聞かない。その瞳には殺意があり、警官たちは犬に殺される気がした。
やがて一人の警官が持っていた拳銃で警察犬1頭を射殺した。
それを皮切りに、他の警官も警察犬に向けて発砲し、用意されていた3頭の警察犬はすべて射殺された。阿鼻叫喚。犬を用意した鑑識課から悲鳴や怒号が飛び交う。
隊長が激怒して叫ぶ。
「キサマら、何を血迷っているか!!発砲中止!!」
黒い犬の遠吠えはまだつづいている。
「・・・も、申し訳ありません・・・私は大変な間違いを犯しました・・・」
1人の警官が警察犬に咬まれた腕から血をだらだら流しながら、朦朧とした目をしている。
かと思うと、拳銃を自分のこめかみに当て、引き金を引いた。
「う・・・うがぁぁぁぁぁ!!」別の警官が突然叫び立ち上がる。
そして銃口をおもむろに自分の口に咥え、引き金を引いた。
ツカツカと歩み寄った二人の警官はお互いにうなずきあいながら、同時にお互いの額に向け、弾丸をぶち込んだ。
あの犬の遠吠えを聞いていると、自責の念が急速に高まって行く。耐えがたいほどに。
「こ、後退!!後退だ!! 倉庫外へ後退!!」隊長の命令で全隊員が倉庫外へ退避する。
4人の警官と3頭の警察犬の遺体も急ぎ運び出された。
「おぉ? 警官隊のやつら逃げてったぞ、クーシー!」
倉庫内は一時的に静かになった。
倉庫外で新たにバリケードを築き、包囲網を作り直す隊長の無線に、署長から激しい罵倒の声が響いている。
kamaです。以前書いた犬のお話、ドリームボックスの続編を書かせていただきました。
前作は割と人気作品のようで、多くの朗読者様にも読んでいただきました。感謝です。
そのまま終了してもよかったのですが、韓国でも朗読され人気になったようで、
別作品の「母の生まれた謎の集落」を書いたときにコメント欄で韓国のお話みたいと言われたのが
ヒントとなり、一度韓国がらみの作品を書いても良いかなと思い、この呪われたブラックドッグを
韓国に渡らせることにしました。・・・と言いたいところなのですが、本編ではご覧の通りとなりました。ボクはこのつづき「ドリームボックス3.0」は書くつもりはありませんのでこれで終わりにしたいと思いますが・・・どうなんですかね。韓国と言えば橋が折れたりビルが倒壊したり、金融危機に陥ったり・・・もしかして、もうブラックドッグたちはとっくに渡っているのかもしれないですね・・・。
わたしとしては、呪われたブラックドッグがライフルで狙撃され良かったと思ったのに、お腹に赤ちゃんを宿しながら・・・続きがあると思いきや、なんと3.0が無いとはとても残念。
しかしながら、面白かったです。
↑コメントありがとうございます。
まぁ3.0のお話は韓国が舞台になるでしょうからね。ボクは韓国は行ったこともなければなんの知見もありませんので、リアルにお話を書いていくことができませんし。
まぁでも、3.0希望の声が多数寄せられたら、乗せられやすいタチなので韓国取材はじめちゃうかもしれませんけど~。・・・でもまぁとりあえずこの辺にしときます。
・・・続き書きたい人に書かせてあげるって手もあるかなぁ・・・