ドリームボックス 2.0
投稿者:kana (210)
「あっ、そう・・・いい番犬なんだ・・・で、身分証見つかりました?」
そう問い詰めた後、急に頭がフラっとして、めまいのような感じになり、見ている風景が横倒しになった。地面に倒れたカメラのようだ。顔のすぐ下に地面がある。
「あ・・・あれ?どうしたのかな、ワシ・・・」駐在は自分が倒れたのではないかと思い手足をばたつかせて立ち上がろうとした。だが、手足が空を切る。動かしているのに何もつかめない。顔のすぐ下に地面があるというのに、その地面さえ触れなくなっている。不思議な感覚だ。なぜか地面の下にまで手を伸ばせる・・・。
「あれ・・・ワシ・・・どうなってるのかな?」
確かめようとするが、首が動かせない。
キャンパーの青年が寄って来て何かしている。衣擦れの音やベルトをはずすカチャカチャという音がする。黒い犬の顔が間近まで来て、鼻先をペロペロ舐める。くすぐったい。
が、犬の口の周りが血まみれになっているのが見えた。
「えっ・・・どうしたの? その口の周り・・・、血じゃない?」
キャンパーの男が覗き込んできてこう言った。
「駐在さん、心配しないで大丈夫ですよ。ゆっくりお休みください」
「いや、今勤務中ですから、休んでなんか・・・」そう言おうとしたが、喉から声が出ない。ついでにひどい睡魔に襲われ、だんだん眠くなってきていた。目がとろ~んとしてきて、今にも意識を失いそうだ。
「オヤスミナサイ、永遠に」キャンパーの男が言った。
駐在は、とっくに生首だけになっていた。
クーシーは駐在が撫でるためにしゃがんできたのを見計らって、首に咬みつき、そのまま切れ味鋭く二度三度と喉に食いついた。やがて駐在の頭はゴロリと転がり、胴体から離れていたのだ。
男が駐在の服を脱がせていく。クーシーが駐在の内臓を食べやすくするためだ。
ベルトも外し、拳銃も奪った。
その間、駐在は痛みなどはまったく感じておらず、すでに切り離された手足もまだあるかのように錯覚していた。幻覚の一種なのかもしれないが、駐在は意識を失う瞬間まで、自分が死んだ事にさえ気付いていないようだった。
「クーシー、食べたら行くぞ。ここはもうアブナイ」舌なめずりして男を見るクーシー。
やがて何かを察したのか、野犬の群れが集まりだす。
だが、集まった野犬たちはクーシーを襲うわけでもなく、むしろみんな『待て』の状態で大人しく待機しているといった雰囲気だ。まるでボスが食べ終わるのを待つかのように。
拳銃をしまい、キャンプ道具を片付けた男がクーシーに言う。
「そろそろいいだろ、行くぞ、クーシー」
大きく口の周りを舌なめずりしたクーシーは頭を上げ、男に付いてその場を離れた。
残った駐在の遺体を野犬たちが貪り食う。骨まで残さない勢いだ。
・・・・・・
駐在行方不明の報を受けて、県警が捜索。駐在の遺体はその日の内に発見された。と言っても、頭蓋骨と幾分かのバラバラなった骨だけなのだが・・・。
当初は多くの野犬に襲われたと考えられていたが、すぐに拳銃がなくなっていることが判明し、殺人・死体遺棄・損壊、拳銃強奪の容疑で捜査がなされた。容疑者は直前に駐在が探していた怪しいキャンパーに絞られた。大きな黒い犬を連れている。隠れ続けることはできないだろう。県警はそう予想して各所に検問を敷いた。
翌朝、男と黒い犬は港湾施設の大きな倉庫の一角に隠れていた。
昼間に動くのは目立ちすぎる。ここに隠れて時を稼ぐつもりでいた。
実は今の彼らは1人と1頭ではなくなっていた・・・1人と2頭である。
kamaです。以前書いた犬のお話、ドリームボックスの続編を書かせていただきました。
前作は割と人気作品のようで、多くの朗読者様にも読んでいただきました。感謝です。
そのまま終了してもよかったのですが、韓国でも朗読され人気になったようで、
別作品の「母の生まれた謎の集落」を書いたときにコメント欄で韓国のお話みたいと言われたのが
ヒントとなり、一度韓国がらみの作品を書いても良いかなと思い、この呪われたブラックドッグを
韓国に渡らせることにしました。・・・と言いたいところなのですが、本編ではご覧の通りとなりました。ボクはこのつづき「ドリームボックス3.0」は書くつもりはありませんのでこれで終わりにしたいと思いますが・・・どうなんですかね。韓国と言えば橋が折れたりビルが倒壊したり、金融危機に陥ったり・・・もしかして、もうブラックドッグたちはとっくに渡っているのかもしれないですね・・・。
わたしとしては、呪われたブラックドッグがライフルで狙撃され良かったと思ったのに、お腹に赤ちゃんを宿しながら・・・続きがあると思いきや、なんと3.0が無いとはとても残念。
しかしながら、面白かったです。
↑コメントありがとうございます。
まぁ3.0のお話は韓国が舞台になるでしょうからね。ボクは韓国は行ったこともなければなんの知見もありませんので、リアルにお話を書いていくことができませんし。
まぁでも、3.0希望の声が多数寄せられたら、乗せられやすいタチなので韓国取材はじめちゃうかもしれませんけど~。・・・でもまぁとりあえずこの辺にしときます。
・・・続き書きたい人に書かせてあげるって手もあるかなぁ・・・